• トップ
  • >
  • 第33回 シャンパーニュの格付け

第33回 シャンパーニュの格付け

私の友人でイタリア料理のシェフ、エンリコ・デルフリンガー氏、彼は、かつて故ダイアナ妃の専属料理人であったところ、ブッシュ大統領の父君ジョージH・W・ブッシュ氏に見込まれホワイトハウスへ呼ばれ、それから数年、ホワイトハウスで、来賓するゲストのために腕を振るった人です。国家でもてなすレセプションや正餐で必ずサービスされるシャンパーニュ。日本でも近年シャンパーニュ愛好家が増えました。そこで気になるのが、“○○王室御用達”という言葉。 その中でもっとも権威のあるものが英国王室御用達です。英国王室御用達と勅授をうけるためには、まず英国王室に3年間無料提供し、王室委員会にその品質を認められなければならず、王室御用達の認定を与える権限を持っているのはエリザベス女王、エジンバラ公、チャールズ皇太子だそうです。先月、あるシャンパーニュ・メゾンの当主と会った時、英国王室御用達というステイタスについて話を向けてみますと、「まず、王室主催の晩餐会を行う際に数がそろうこと、品質にバラツキがないこと、半永久的に同一の格を保ったまま王室に供給できることが基本」と聞きました。こういったときに物をいうのが、シャンパーニュの格です。



<--◆-->

ボルドーのような格付けはありませんが、まずグランクリュものであることが大事です。
実のところをいうと、シャンパーニュにおける格付けは1999年に消滅しました。これは1919年に導入された格付けで、もともと、最高のブドウが得られるとされた村からの買い付け価格を100%とした場合、この村からの買い付けを何%持つかということで格を表したものですが、この村ごとに与えられたエシェル・デ・クリュ(クリュの等級)は、個々のブドウの品質や需給関係を無視した自由競争を阻害するものとしてEUにより廃止されました。
シャンパーニュAOCを名乗ることができる村317村のうち、当初格付け100%と認められた村は12村、1985年に5村追加され、合計で17のグランクリュ村が存在したわけです。格付け自体は廃止になりましたが、伝統的慣習に基づくグランクリュ信仰は根強く残っています。もちろんグランクリュというだけでは信用を得られず、さらにグラン・メゾンであることが必要です。ではここで、17のグランクリュの畑を紹介しましょう。



<--◆-->

シルリー
マイイ・シャンパーニュ
ピュイジー
ヴェルズネイ
ヴェルジー
ボーモン・シュール・ヴェール
アンボネイ
ブジー
ルーヴォワ
トゥール・シュール・マルヌ
アイ
シュイイ
オワリー
クラマン
アヴィーズ
オジェ
ル・メニル・シュール・オジェ



<--◆-->

グランクリュが存在するのは、モンターニュ・ド・ランス東部の北とヴァレ・ド・ラ・マルヌの入り口付近、そしてコート・デ・ブランの北部に限られています。村自体がグランクリュなのではなく、村に属するブドウ畑がグランクリュになります。



<--◆-->

次に大事なのが。単一クリュか、ブレンドかという点。こちらはどちらが優勢というのではなく、スタイルの問題です。ここでRM、NMなどの業態別表記記号を説明しなければなりません。シャンパーニュ・メーカーには、その業態を表す表記記号があり、現在8つの業態に分かれています。



<--◆-->

NM ネゴシアン・マニピュラン…ネゴシアン兼醸造業者。自社畑もしくは、買い付けたブドウでシャンパーニュを醸造し瓶詰め、発売元となる業者。
RM レコルタン・マニピュラン…ブドウ栽培業者兼醸造業者。自社畑のブドウのみで醸造する。
CM コォペラティヴ・ド・マニピュラン…生産共同組合。組合員が栽培したブドウ
RC レコルタン・コーペラトゥール…ブドウ栽培業者兼共同組合員。加入している組合亜から原酒を買い、シャンパーニュを製造する。
SR ソシエテ・ド・レコルタン…ブドウ栽培業者団体。
ND ネゴシアン・ディストリビュトゥール…ネゴシアン流通業者。瓶詰めされた完成品を購入して自社ブランドのラベルを貼り販売する。
MA マルク・ダシュトゥール…顧客の要請により顧客名で造るブランドのこと。
R  レコルタン…製造業者でもなく共同組合員でもない農家が、自身の畑で収穫したブドウをネゴシアンに製造委託すること。



<--◆-->

王室御用達になるブランドとしては、主にNMネゴシアン・マニピュランで、そのメゾンが何代にもわたって継承されており、ブドウは長年にわたって信用のある畑から収穫しなければなりません。
ここに現在認定された英国王室御用達のシャンパーニュ・メゾンを紹介します。



<--◆-->

BOLLINGERボランジェ
G.H. MUMM ジー・アッシュ・マム
LANSON  ランソン
LAURENT -PERRIER ローランペリエ
LOUIS ROEDERER ルイ・ローデレール
MOET & CHANDON DOM PERIGNON モエ・エ・シャンドン ドン・ペリニョン
KRUG  クリュッグ
POL ROGER ポール・ロジェ
VEUVE CLICQUOT-PONSARDIN ヴーヴ・クリコ-ポンサルダン





第34回 ワインのオークション >>
壬生有香の「美食画報」 TOPへ >>
美通信 コンテンツ一覧へ  >>