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第52回 ミシュラン・ガイド

食やレストランに興味を持つほとんどの人が知る「ミシュラン・ガイド」。赤い装丁で"ムッシュ・ビバンダム"が目印のレストランガイドブックです。



フランスで初版が発行されたのは、1900年。パリ万博が開催された年で、当初ドライバー向けのガイドブックとして、市街地図のほかにガソリンスタンド、郵便局や電話(当時は携帯電話などもなかった)、ホテル、はたまた自動車の修理工場など運転中必要とされる情報を満載に盛り込み35,000部を印刷、無料配布されました。これはタイヤ製造会社のミシュランが、自動車旅行を普及させてタイヤの売れ行きをあげる目的だったのです。


 

第1次世界大戦をはさむ1915年から1918年までの3年間は戦争の影響で出版が中断されましたが終戦後にはすぐに復活。しかし、このころミシュラン兄弟がある修理工場で、傾きかけた作業台の脚がわりにミシュランガイドを積み重ねていたのを見て人は金を払ったものしか大切にしないことを知り、それまで無償配布をしていたガイドを有料にしたそうです。



ミシュラン・ガイドの中でももっとも話題になっているのがレストランとホテルの評価をつけたガイドブックで、これが赤い装丁なので、フランスではLe Guide Rouge、英語でRed Guideと呼ばれています。各国に都市別で発行されることが多く、原則としてその国の言語で発刊されます。評価はその店の料理にたいして星(ミシュランの決めた星マーク)の数で表されます。
1つ星=その分野で特に美味しい料理
2つ星=極めて美味であり遠回りをしてでも訪れる価値のある料理
3つ星=それを味わう為に旅行をする価値がある料理



一方、フォークとスプーン印では快適さとサービスを評価するマーク、ホテルの項目はファサードを印としています。また国によってマークが異なりますがコストパフォーマンスがよいかどうかを決めるマークとして、米国は$マーク(平均予想金額の目安)やコインマーク(25$以下で楽しめる店)の評価があり、そのほかに、ワインや酒、カクテルの品揃えが素晴らしい店にブドウの房や徳利と御猪口、カクテルグラスのマークなどの種別があります。



ミシュラン・ガイドに掲載されたレストランが星をひとつ獲得すると店の売り上げは30%増、ミシュラン・ガイドが刊行された国はミシュランタイヤを買う人が3%増えるという統計がとられました。この星評価に一喜一憂する業界を危惧する意見も多数あります。数年前にそれまで三つ星を取っていたレストランのシェフが星を落とされたために(真実かどうか?)自殺という手段でそのシェフ人生の幕を閉じたことが大きく報じられ、世界中に物議をかもしました。



日本では東京版が2007年11月に発売になりました。欧米以外では初めての国で、和食店や寿司店が3つ星を獲得しました。星の数からいいますと、パリの97個(64軒・2008年版)に対し、日本で獲得した星の総数は191個(150軒)となり、星の乱発と言われましたが、これには、ミシュラン・ガイド・ブックのジャン=リュック・ナレは「日本料理には数世代、何百年とかけて継がれた技術、そして食文化の伝統がある。また、諸外国の日本料理店では寿司、天ぷら、焼き鳥などすべての和食が同一店でだされているが、日本ではそれらがすべて専門店に細分化され、また各ジャンルにおいて非常に高いレベル。専門性において極めて確保されていることが高い評価につながる」と言っています。



日本でのミシュラン・ガイドもすでに定着し、高い発行部数を発表しています。『ミシュラン・ガイド東京・横浜・湘南2012』は2011年12月2日に発売になります。他、すでに「京都・大阪・神戸・奈良」版も発売されており、「北海道」版は2012年4月に発売予定。日本の食文化を高く評価しています。ミシュラン・ガイド大阪京都2013は2012年10月16日に、ミシュラン・ガイド東京・横浜・湘南2013は11月28日に発表になりました。





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