vol.62 原種のバラ


バラの季節がやってきました。
私の住む都心の郊外にある住宅街では、
あそこも、ここもというくらい庭にバラが植えられています。
バラは栽培が難しいとよく言われますが、どれもきれいに花びらを広げて、
さすが花の女王といった風格です。



この黄色い小さなバラ、見かけたことはありませんか?
モッコウバラです。
今、ご婚約が話題になっている眞子さまのお印です。
お印とは、皇族の方々が身の回りの品につける家紋のような印です。
モッコウバラは世界に100種以上あると言われているバラの原種のひとつです。
バラの原種とは、その土地に自生していた種、つまり野生のバラ。
モッコウバラは中国中南部が原産で、つる性の常緑低木です。
ちょっと意外な気がしますが、バラの原種が一番多いのは中国。
バラというと誰もがヨーロッパを想像してしまいますね。
100種類以上ある野生のバラの中で、
私たちが愛でている今の園芸品種に貢献したと言われているのは、たった8種類。



その8種類の中でも、特に現代バラに大きく貢献し、
バラの発展に一代革命をもたらしたバラと言われているのが、
中国原産、コウシンバラ。
18世紀にコウシンバラなどの中国のバラがヨーロッパにわたり、
バラの四季咲き性をもたらしたと言われています。



日本原産、ノイバラです。
ノイバラは現代バラに房咲き性をもたらしました。
東日本大震災のチャリティーローズKIZUNAもこのノイバラの血を受け継いでいます。
日本から渡ったノイバラがフランスで10代のバラの品種を経て、
KIZUNAとなって、東北のために日本へ帰ってきました。



KIZUNAです。
ノイバラと違って一輪が大きいですが、これで1本枝です。
見事な房咲き。



生田バラ苑のノイバラです。
バラ苑のシンボルツリーですね。
ノイバラは沖縄を除く日本全国に自生していたと言われています。
またとても丈夫なため、日本ではノイバラを台木に利用しています。
園芸用のバラはノイバラの台木に他の色々なバラを接ぎ木して、販売されています。
万葉集に登場する「宇万良」はノイバラと言われ、
古くから人々の近くで自生していたことが伺い知ることができます。



もう1種類、先の現代バラに大きく貢献した8種類の中に入る日本原産バラ、ハマナスです。
こちらは雅子さまのお印です。
果実はローズヒップとして食用になるとか。



ハマナスの八重咲きの白です。



8種類のバラ以外にも、たくさんの原種のバラが自然、人工交配され、
現在2万種ともいわれているバラの誕生に貢献してきました。
そのひとつ、ロサ モスカタ、西アジア、北アフリカ原産。
ムスク(じゃこう)の香りの強いバラです。

交配を重ねたバラに比べれば、すぐ散ってしまうし、花も大きくない。
でもその姿は可憐でとても美しい。
華やかさはなくとも、自然風景に溶け込む、素朴なバラたちです。
バラ園などでは、なかなかお目にかかれない、
あっても見過ごしてしまいがちな原種のバラ。
これらの野生のバラは5月28日まで開苑の、
生田バラ苑で見ることができます。
バラ園にはめずらしく、入場無料です。
ぜひ、お出かけください。

生田緑地バラ苑
http://www.ikuta-rose.jp/




・森 美保【オフィシャルサイト】

http://www.arrierecourune.com/




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