vol.77 絵画の中の花


35年ぶりにフィレンツェを訪れました。
観光客も増え、華やかな街の印象。
今回の旅行の目的のひとつ、ウフィツィ美術館へ。
35年前はガラガラの館内を友達と二人、
見覚えのある絵画をさがして見て回りましたが、
今回はネットで入場の事前予約をしました。
予約時間に美術館に行っても長蛇の列で、
入場までに30分ほど並びました。
どこの美術館もテロ対策の荷物チェックのため、
入場に時間がかかります。



やっと入場。
もともとはフィレンツェの行政機関の事務所。
すばらしい回廊が続きます。
イタリア最大の収蔵品を誇る美術館。
すべてを鑑賞するのは難しいと思い、
お目当てを決めて回ることに。
前回の旅行で見逃した「ヴィーナスの誕生」はぜひ見たい!
その時は何と、日本に貸し出されていて見ることができませんでした。



15世紀から16世紀初頭に活躍したポッティチェリの代表絵画。
「ヴィーナスの誕生」
この絵はバラ好きにとっても、興味深い有名な絵画です。



絵画の左、女神フローラに変身するタロリスの口からこぼれるバラの花。
このバラの種類は諸説あるようで、
ローザ・ガリカとも、半八重のローザ・アルバとも。
まだこの時代は自然界に生まれた原種のバラだけで、
現代のバラのほとんどがそうであるように、人の手が生み出した(交配した)バラは、
もう少し時を待たなければなりません。
しかしすでにバラは愛の花として人々に愛され、
絵画の中の愛の象徴として重要な役割を担っています。



同じくポッティチェリの代表作 「プリマベーラ」
この絵には190種類ほどの花が描かれているそうです。



この絵も有名ですね。
レオナルド・ダ・ヴィンチの「受胎告知」



この「受胎告知」の絵の中にも花は重要な役割をしています。
描かれているのは、
大天使ガブリエルが聖母マリアに神の子を授かることを伝えに来た場面。
大天使ガブリエルが手の持つのは白いユリの花です。
このユリの花の描かれ方に色々な謎が隠されていると言われています。
宗教画では白ユリを描く際、
男性を象徴するおしべを描かない約束事があるにもかかわらず、
ダ・ヴィンチはガブリエルの持つ白ユリにおしべを書き入れました。
よく見るとユリの中央が黄色いのがわかります。
何しろ300年以上も前の事、一枚の絵から当時を推測する、
時間旅行をしている気分になります。


絵画を鑑賞する時、「花」を題材にして見ることが多いのですが、
いつも思いもよらないストーリーを発見します。
これは35年前に鑑賞した時にはわからなかった楽しさですね。



鑑賞に疲れると、窓の外を眺めます。
夕暮れのポンテ・ヴェッキオ橋、2018年の現在とは思えない風景です。

美術鑑賞は面白いけれど、疲れます。
ほどほどにして、そろそろ退出しましょう。



ウフィツィ美術館の近くのカフェで一服。
シニョリーア広場にある1872年創業のカフェ・リヴォワール。
カウンターで発泡性白ワインのプロセッコをいただきます。
カフェのカウンターでワインなんて、35年前には思いつかなかった。
それに、20代じゃ様にならない。
年齢を重ねるのも悪くないと思う瞬間です。





・森 美保【オフィシャルサイト】

http://www.arrierecourune.com/




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