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vol.87 プラントハンター


前回、幕末に日本を訪れたプラントハンター、ロバート・フォーチュンについて紹介しました。
彼は腕利きのプラントハンター、つまり外国の珍しい植物を本国イギリスに持ち帰るプロ。
彼の仕事がイギリスのガーデニングの発展に貢献したことは、すでに紹介した通りです。



ロバート・フォーチュンが来日する以前に、
彼は中国から紅茶の苗と製造方法を密かに持ち出していました。
この本はアメリカのジャーナリストであるサラ・ローズが書いたノンフィクション。
アヘン戦争の後、イギリスは高い中国のお茶を当時植民地であったインドで生産できないかと考えます。
この時代すでに、イギリスでは紅茶は日々の暮らしになくてならない存在でした。
そこで、腕利きのプラントハンターであるロバート・フォーチュンに白羽の矢を立てます。
そして、見事に中国の茶の苗と職人をインドへ運びこむことに成功します。
その時代の中国は、日本同様、外国人の自国での活動を厳しく制限していました。
フォーチュンは中国人に変装して、中国の内陸へとお茶の木を探して潜入していきます。
スリルに富み、まるでスパイ映画のような面白さです。
この時代の中国の様子も垣間見ることができて、上質のノンフィクションに仕上がっています。
紅茶好きの方は、思わぬ紅茶のルーツを知ることができますし、
私のような花好きにとっては、植物を運ぶ苦労がたいへん興味深い。
世界を動かした歴史上の大きな史実が、協力者があったとはいえ、
たった一人のプラントハンターがやってのけたことに感動します。
お勧めの一冊です!



これは香港で購入したティーポット。
大ぶりなので、お客様がいらしたときに便利です。
25年くらい使ってますが、
竹の取っ手がかわいらしく気に入っています。



今日のティータイムは、おみやげにいただいた紅茶を入れました。
ロンドンの“H.R.ヒギンスコーヒー、紅茶”のDUKE STREET。
おめでたが続く、英国王室御用達の店。
本店のある通りの名前がつけられたブレンドティー DUKE STREETはバランスの良い上品な紅茶です。
ミルクティーでいただくのがお勧めのようですが、
ストレートで飲んでも、香り高く上質な美味しさです。
そして、なくてはならないテーブルフラワーは中国のティーポットに、
今が盛りを迎えた庭のアジサイをいけてみました。
大きいアジサイが西洋アジサイ。
西洋アジサイは18世紀に、日本のアジサイが中国を経由してロンドンに渡り、
品種改良の後、大正時代に日本へ逆輸入されたもの。
小さいガクアジサイが山アジサイとよばれる日本原産のアジサイの園芸品種です。

今では、ヨーロッパの花市場で競られた花が2,3日後には日本へ届く時代ですが、
こんな昔から、人間の手で植物が世界を回っていたなんて、
今では想像もつかないほどの手間や労力が必要だったに違いありません。
そんな時代に思いをはせて、美味しい紅茶をいただきます!

H.R.ヒギンスコーヒー、紅茶
http://www.bask-kobe.com/





・森 美保【オフィシャルサイト】

http://www.arrierecourune.com/




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