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vol.13 お正月を彩る花たち


年末になると、滞りなく新年を迎えるために様々な準備がなされますよね。年賀状を書いたり、おせちを作ったりと、さまざまな準備がある中で忘れてはならないのが、お飾りです。


松飾りについては前回ご紹介いたしましたが、お正月飾りは松だけではありません。今回は、お正月に色を添えるお飾りや花たちについてご紹介したいと思います。


まずは、しめ飾りです。年末になると、街中でもお正月の市が立つようになります。そういったところで販売されているのは、門松や、しめ飾り、輪飾りなどです。輪飾りはしめ飾りが簡略化されたものですが、しめ飾りは神社などで飾られるしめ縄の小型版に装飾が加えられたもので、しめ縄に、邪気を払い神域を表す白い紙の飾りである紙垂(しで)をはじめ、縁起物を多数あしらいます。これを玄関の正面やマンションのドアの正面に飾るもので、門松と同様、歳神様の依代(依代)となって、旧年中の邪気を払ってくれるものです。


しめ飾りに飾る縁起物には、橙(ダイダイ)の実、裏白シダ、ユズリハの葉などがありますが、それぞれに意味があります。裏白シダは、左右に二枚の葉が広がることから「夫婦円満」を、裏が白いことから「清らかな心」を表しています。橙は、家族の「代々の繁栄」を表します。ユズリハの木は、新しい葉が伸びてしっかりと固まってから古い葉が垂れ下がり、そしてやがて落ちていくことから、家督の確実な移譲と自然な世代交代の祈願が込められています。



このように、お正月飾りにはいろいろな意味が込められているのですが、これは、松と一緒に生けるとよいといわれている花材も同じことです。お正月の花としては、千両、万両、南天、橙(ダイダイ)、梅、竹、椿、菊、蘭、蝋梅、葉牡丹、雪柳など多種の花が使われます。最近では、洋花も多く使われるようになってきました。洋花を用いると、やはりモダンな雰囲気の正月花になりますが、ここでは縁起物としての意味を持つ花たちについてお話ししたいと思います。


まずは、千両と万両です。赤い実をつけること、また名前がすでにおめでたいので、商売繁盛の縁起物として、千両・万両ともによく使われます。名前が似ているこの二つの違いを、皆様ご存知でしょうか?千両は葉よりも上に実がつきます。反対に万両は、葉の下に実がつきます。ちいさいころ、祖母が教えてくれたのを今でも覚えていますが、「千両は安いから実が見える(=実が葉の上に)、万両は高くて大事にしないといけないから葉で隠している(=葉の下に実が)」のだそうです。これは大変覚えやすいですよね。また実際に飾られるのには、千両のほうが実がよく見えて見栄えが良いので、多く使われる傾向にあります。


同じく赤い実に、南天があります。葉も常緑ですので縁起物として使われますが、「難を転ずる」とかけて、古くから不浄を払う樹木とされており、また火難除けとして用いられています。


また梅、竹は「松竹梅」といわれ縁起物としてはもちろんみなさまご存知と思います。梅は、花が白と赤とありますが、これが紅白でめでたいということから、お正月だけでなく祝いの席には欠かせない存在です。また竹は、門松にも用いられますが、青々とまっすぐに伸びること、成長が早いことなどから、縁起が良いと考えられてきました。


そして蘭や菊は、昔から水墨画などでもよく描かれていた花ですが、その高潔な姿から四君子に数えられた蘭・菊は、竹・梅とともに縁起の良い花といわれているのです。
椿は、梅と同様、花に紅白があることから祝いの花として用いられます。また真冬に美しい花を咲かせるということからも、お正月によく使われます。


水仙は、かわいらしい花を咲かせ、大変甘い良い香りがします。漢名の「水仙」は「仙人は天にあるを天仙人。地にあるを地仙、水にあるを水仙」という中国の古典からきています。そこから仙人に例えて、生命力の強いものということで「長寿」を意味する縁起物とされたのです。


さらに、葉牡丹は、幾重にもなる葉から「吉事が重なる」ということで、やはり縁起物として数えられています。


ざっとご紹介いたしましたが、これだけでも、お正月の植物、そして縁起物が色々な意味を持っていることがお分かりいただけたのではないでしょうか。縁起物とは古来からの日本人ならではの知恵の一つといえると思います。それを知ることで、何気なく見ている植物の見方が変わってきますよね。


このようなお正月飾りですが、「松の内」が終わる1月7日(地域によっては15日となります)に取り外すのが普通です。取り外した後、15日(地域によって異なります)に神社などで行われるどんど焼きやお炊き上げで焼いてもらいましょう。


みなさまの今年のお正月飾りは、どんなものになるでしょうか?ぜひお花も添えて、楽しんでみてください。




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