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vol.103 江戸時代、庶民の花と園芸


江戸時代、園芸が盛んだった?
生け花や花の文化の歴史を辿っていると必ずそんな説明が出てきます。
具体的には江戸時代の人はどんなふうに花を愛でていたのでしょうか?
と思っていたら、こんな展示会の案内を見つけました。



たばこと塩の博物館で1月31日から3月10日まで展示されています。
庶民生活のシーンで花や園芸が描かれた浮世絵を集めた、
なかなか見応えのある展覧会でした。
館内は撮影禁止なので、図録の写真でご覧下さい。

江戸時代の人は何の花が好きだったのでしょう。
年の初めは梅や福寿草、そして春の七草。
春は桜、夏は朝顔、秋は菊に秋の七草と、
今と変わらぬ花や植物が好まれていました。
ただ、植木鉢には大変凝っていたようです。



足のついた染付の見事な陶器の鉢も展示されていました。
育てるだけではなく、鉢にもこだわり、
この時代のやきものの発展とともに園芸文化も広まっていったのかもしれません。



これはおもちゃ絵と言って、
観賞用だけではなく、使用を目的とした浮世絵。
個別の絵柄を切り抜いて遊ぶ玩具として、
人気のある鉢のリストのような役割としても使用されていたそうです。



左下のほうに、バラの絵も。
江戸時代、すでにバラの花が商品として存在していたことに驚かされました。
バラの品種は古く中国から渡来したコウシンバラでしょうか?





江戸時代、有名なのが朝顔の人気です。
武士から庶民まで朝顔に熱狂しました。
変化朝顔といわれる変わり咲きの朝顔が大人気で、
品評会や番付ができるほど。
浮世絵にも変化朝顔の絵がありました。
葉を見なければ朝顔とはわからないほど。
この時代はまだ人工交配などの技術はなく、
自然交配を繰り返して、このような変種の朝顔が誕生していたそうです。



庶民の楽しみといえば、やはりお花見。
亀戸の梅屋敷の梅の花見のようすが描かれています。



現在も見ることのできる菊人形。
この時代では植木屋さんが多かった地域で興行として盛んに行われたようです。

これは白菊の花の像。
江戸っ子は奇抜なものが好きだったようですね。



一本の菊に百種の花を接ぎ木したもの。
実際に見てみたいですね!
花見に行けない人、花見で見た花を身近でさらに愛でたい人などに、
梅、桜、菊などの鉢ものが人気だったことでしょう。



当時の芝居の舞台でも鉢ものや植木売りが登場していたようです。
これは七代目市川団十郎が春の七草の籠売りに扮している浮世絵。
いなせな植木屋ですね。
江戸時代にはこうした天秤棒に商品をさげて売り歩く棒手振りと呼ばれる行商人が多くいたようです。
庶民に人気な歌舞伎役者と結びついて、さらに園芸文化は発展。
もしかしたら、この頃の植木屋さんはかっこいい花形職業だったかもしれません。



こちらは植木屋の店舗のようす。
店の裏は広い植木が並んだ庭のようなスペースになっています。
幕末に江戸にやってきた当時のプランツハンター(珍しい植物を探し出すプロ)
ロバート・フォーチュンは江戸の染井にある植木屋街を訪れて、
あまりの規模の大きさに感嘆しています。

江戸時代、せとものや芝居の文化とうまく結び付き、
江戸っ子たちの心をつかんだ花と園芸。
この頃の平和な庶民の暮らしを垣間見るような展覧会でした。
その昔、農耕民族だった日本人にはいつの時代も植物が暮らしのそばにあったようです。

浮世絵
江戸の園芸熱 図録より


たばこと塩の博物館
https://www.jti.co.jp/Culture/museum/index.html





・森 美保【オフィシャルサイト】

http://www.arrierecourune.com/




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