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vol.107 江戸の花
最近は本はネットで買うことが多くなりました。
昔はお気に入りの本屋があって、
そこへ行けばいつも読んでみたいと思う本に巡り合え、
本屋で過ごす時間がいい気分転換になっていました。
ふと、そんなことを思い出して、ひさしぶりに本屋をのぞくと、
とてもいい本に出会えました。

江戸時代に編集された日本最初の彩色植物図鑑「本草図譜」から抜粋した96点の植物画に、
和名の由来や植物の歴史や伝来のエピソードなどの他、
薬草としての効能なども説明されています。
掲載されている植物は私たちの暮らしに中でおなじみの花ばかり。
表紙に描かれている「ケシの花」を見てもわかるように、
どれもその植物画が絵画としてすばらしい。

こちらは桜。
東京ではソメイヨシノの花びらがはらはらと風に舞い美しい時ですが、
この絵に描かれているのはヤマザクラでしょうか。
赤みがかった葉と白に近い薄紅の花が何とも日本らしい雰囲気です。

これは「かぼちゃ」
実も描かれていますが、私たちが馴染みのあるかぼちゃとはちょっと形が異なりますね。


現代では雑草と言われる「どぐだみ」や「かたばみ」
抜いても抜いても生えてくる庭のやっかいもの。
実はどぐだみの花は白い可憐な花。
花市場で売られていたのを見たことがある実はかわいいんです。
かたばみも食べると少しすっぱい味がして、
三つ葉の葉型が愛らしいので、食用として用いられることもあるようです。

そして薔薇。
一重の可憐な姿です。
まだまだこの時代には、今のように花の女王というような品種ではなく、
原種またはそれに近い品種のみで、種類も少ない花でした。
このように描かれているバラをみると、実に和花そのもの。
この後時を経て、バラは豪華で華やかな花に変身していくことになります。
図鑑に描かれている植物画はどれも美しい。
西洋の植物画に比べ若干精密さには劣りますが、
上質な日本画のような和の雰囲気に癒されます。
新しい元号「令和」で古の和歌が話題に上りましたが、
古き良き日本の良さを改めて感じる花図鑑です。
手元において、愛でたい一冊と言えます。
美し、を貸し、和名由来の江戸花図鑑
田島一彦著
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