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vol.17 さいた、さいた~チューリップのお話~


突然ですが、幼いころを思い出してみてください。みなさまが一番初めにおぼえた、お花の歌は何だったでしょうか?きっと、「さいた、さいた~♪」というチューリップの歌だったのではないでしょうか。そして、お絵かき。小さな子どもに「お花の絵をかいて」と言ったら、チューリップの絵を描く子はとても多いはずです。それほど、チューリップは身近で、幼いころから認識しやすい花だと言えるでしょう。かわいらしくて、春らしくて、育てるのも簡単なので、球根を植えたことがあるという方も多いと思います。今回はそんなチューリップについて、お話しさせていただきましょう。



チューリップというと、花に携わる者として一度はこの目で見てみたいとあこがれる光景があります。ゆったりと風を受けて動く風車を背に広がる、一面のチューリップ畑。そうです、オランダのチューリップの景色です。ご存じのとおり、オランダは世界有数のチューリップの生産地です。実はチューリップだけでなくさまざまな花の生産地として有名なので、見学にいったことがありました。私が訪れたときは、タイミングが合わずチューリップが咲く時期ではありませんでしたが、街中ではチューリップの球根があふれんばかりに盛んに販売されていたのを驚いた記憶があります。



現在、生産が盛んなのはオランダですが、原産地はアジアだと言われています。古くにはオスマン帝国において愛でられていたことが、当時の壁画やタイル画、衣服の模様として描かれたことからもわかっています。そして16世紀に、トルコで栽培されていたものがヨーロッパへ伝わりました。当時のオーストリア大使によって国に持ち帰られたのち、大使の友人がオランダのライデン植物園にてチューリップの栽培と研究を始めます。たちまちチューリップの人気は高まりました。何度も盗難が起こるなど、すさまじいものだったようです。16世紀末にはイギリスでも栽培されるようになり、19世紀には品種改良も盛んになり、今日でも数多くの品種が研究されています。



チューリップという名の語源ですが、トルコからヨーロッパにもたらされた際の勘違いがもとにその名がついてしまったと言われています。大使がチューリップの花を見て名前を尋ねると、そのトルコ人は花の形のことを聞かれたのかと勘違いして、ターバンを意味する「チュルバン」と答えました。チューリップの花は全開しないので、イスラム教徒の人々が頭に巻くターバンによく似ていると考えられていたのです。それを花の名前と思い込んだ大使は、そのまま記録に残しました。そこから転じて、チューリップと呼ばれるようになったのです。



ヨーロッパでのチューリップ人気は、一時期大変なものでした。1634年から37年の3年はチューリップ狂時代、もしくはチューリップ・バブルなどといわれ、珍しい品種の球根が高値で取引されました。植物愛好家から一般庶民までを巻き込んでの社会的な動きともなったようですが、市場の崩壊によりあっという間に値が暴落し、終焉を迎えました。余談ですが、このとき始まった投機的な取引が、現在の商品先物取引のもととなったといわれています。



チューリップが日本にもたらされたのは江戸時代の末期でしたが、そのときにはあまり人気が出ず、大正時代に入ってようやく本格的な生産がされるようになりました。新潟でそれが始まったので、今でも新潟はチューリップの生産が全国2位と、大変盛んです。全国1位なのは富山県で、どちらの県でもチューリップが県の花に指定されています。品種改良が進んだこともあり、現在では実にさまざまな咲き方、色をしたチューリップがあります。花弁が細くとがっているもの、まるいもの、フリルのようになっているもの、八重で咲くものや、色がまだらに2色入っているものもあります。



珍しい形や色をした花を生けるのも楽しみの一つですが、チューリップを生けるときにぜひ気を付けていただきたいことがあります。それは、花の向き。実はチューリップは大変生命力の強い花で、光の方に向かって頭の向きを変えてしまうのです。これは茎が早く伸びるからで観察してみると面白いのですが、条件によっては、いけて一日たってみたら全く花の向きも長さも変わってしまっていた、ということもあるほどです。花の開き具合も、変わります。思い通りにならず困ってしまうときもありますが、そんなときは、これぞ自然の力なのだととらえて、興味深く楽しむようにしています。植物も立派な生き物ですから、大切な命を存分にいかしてあげたいですね。わりと長い期間、切り花でも花屋さんで出回る花ですので、ぜひみなさまも楽しんでみてください。




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