• トップ
  • >
  • vol.18 愛の女神ヴィーナスの花、アネモネ

vol.18 愛の女神ヴィーナスの花、アネモネ


今回は春の花、アネモネについてお話しいたします。



ギリシャ・ローマ神話にも登場しており、ヴィーナスの象徴とも言われているほど、大変古くから人々に愛された花です。



切り花では秋から春にかけて出回りますが、花壇などで楽しむことができるのは早春から春にかけてです。花壇で育てる場合には、球根から育てるのが一般的です。



一重咲きと八重咲きのものがありますが、一重のものはポピーに咲き方やつぼみの形が似ており、混同されやすいかもしれません。大きく開いた花の姿は大変愛らしく、私たちの目を楽しませてくれます。色もさまざまで、赤・白・ピンク・紫・青など、鮮やかな色が多く、春らしさを感じさせてくれる花です。



アネモネという名の由来ですが、ギリシャ語で「風」を意味する「アネモス」という語から来ていると言われています。これは、花の種が長い毛をはやし、風によって運ばれるために「風」が由来となっているようです。英語でも、アネモネのほか、ウィンドフラワー(風の花)と呼ばれています。



アネモネは地中海沿岸地域に自生していたものがヨーロッパに持ち込まれたといわれています。ヨーロッパに渡ってから品種改良が盛んにされ、園芸種として楽しまれていました。日本には昭和初期にもたらされました。和名では、牡丹一華(ボタンイチゲ)もしくは花一華(ハナイチゲ)、紅花翁草(ベニバナオキナグサ)などと呼ばれていました。



アネモネがヴィーナスの花といわれるのは、ギリシャ神話に登場する伝説があるからです。その伝説をご紹介いたしましょう。



~~ある日、愛の女神ヴィーナスが息子のキューピッドと遊んでいると、誤って息子の持つ矢で自分の胸を傷つけてしまいました。その傷が癒えないうちにアドニスを見てしまったヴィーナスは、この美少年に恋をしてしまいます。ヴィーナスの寵愛を受けながらもアドニスは、いつものように大好きな狩りに出かけました。しかし猪の牙を受け、瀕死の重傷を負ってしまうのです。血にまみれた恋人の死体を見つけたヴィーナスは大変悲しんで、その嘆きが年ごとに新しくなるようにと、アドニスの血から真っ赤な花を咲かせました。そしてこの花の命はアドニスの命のように短く、風が花を咲かせたかと思うとあっという間に散ってしまいます。それで人々はこの花をアネモネ、つまり「風の花」と呼ぶようになったのです。~~



また、もう一つアネモネにまつわる伝説があります。
~~西の風の神、ゼピュロスは花の女神フローラの恋人でしたが、あるとき、フローラの侍女であったアネモネに恋をしてしまいます。それに気付いたフローラは嫉妬で怒り、アネモネを追放してしまいました。そこでゼピュロスはフローラと仲直りをするためアネモネを花の姿に変えました。そしてやさしい風でなでるようにアネモネに付き添い、彼女を見守り続けました。そしてアネモネは、風の花と呼ばれるようになったのです。~~



キリスト教徒にとっても、アネモネは大事な花として扱われています。聖書に登場する「野の白百合は如何にして育つかを思え」とマタイ伝に記されている「百合」とは、 実際にはパレスチナに自生していたアネモネだったのではないかという説があります。



また、キリスト教の行事のひとつである復活祭(イースター)においてもアネモネの花が登場します。これは、アネモネの花の赤い色は、人々の罪を背負って十字架にかけられたキリストの血のしずくによるものであるという伝説から、アネモネが復活祭のシンボルフラワーのひとつとなっているからだそうです。



アネモネの花がシンボルとして描かれているものを一つご紹介いたしましょう。
「ペリエ・ジュエ・ベル・エポック」というシャンパンがあります。ヴィクトリア女王やモナコ公妃グレース・ケリーなど世界のセレブリティに愛されてきたというシャンパンで、ワイン愛好家に「シャンパンの華」と称賛されています。当時の社長が、友人であったアール・ヌーボーの巨匠、エミール・ガレにボトルのデザインを依頼したそうで、これが、今も愛されるペリエ・ジュエ・ベル・エポックを象徴する、白いアネモネの花が描かれたデザインボトルなのです。シャンパンの味もさることながら、ボトルの美しさも素晴らしいので、機会がありましたら是非ご覧になってみてください。



かわいらしい花を咲かせるアネモネですが、毒性を持っています。茎を切った時などに出る液が皮膚につくとかぶれてしまうことがありますので、お花を生けたあとにはよく手を洗うようにしてください。



数々の伝説を持つ春の花、アネモネ。色を混ぜていけると華やかに、一色でいけるとかわいらしい印象になります。つぼみと、花が開いた時では雰囲気が全く違うので、ぜひさまざまな表情を楽しんでみてくださいね。




・野邊愛子オフィシャルサイト

【PCサイト】 http://aikonobe.com

・お問い合わせ
aikonobe.com@gmail.com




美人花壇 TOPへ >>
美通信 コンテンツ一覧へ  >>