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vol.21 端午の節句は菖蒲の節句


5月5日は、皆様ご存じのとおり、端午の節句です。五節句の一つに数えられる端午の節句は、ほかの節句と同様、中国から伝わってきた風習のひとつです。現在では、「こどもの日」として、五節句の中で唯一、祝日として設定されており、ゴールデンウィークにも重なることから、家族総出で祝うことのできる節句といえるでしょう。



「端午」の「端」とは、「はじめ」という意味で、「端午(たんご)」というのは本来、5月最初の午(うま)の日のことでした。それが、午(ご)という音が「五」に通じることもあって、奈良時代以降、5月5日が端午の節句として宮中で祝われるようになりました。それが鎌倉時代に入り勢力の中心が武士たちになると、その行事が宮中から武家社会へとひろがっていきます。特に武士たちは菖蒲を「尚武(しょうぶ」」とかけて、盛んに端午の節句を祝うようになるのでした。



江戸時代に入ると、幕府は5月5日を重要な日として定めます。5月5日には、大名たちがお祝いの品などを携え、江戸城に出向くようになります。そして、武家に男の子が生まれると、門前に馬印(うましるし)や幟(のぼり)を立てて男児の誕生を周りの家々に知らせ、お祝いしていました。このような風習が、裕福な庶民の間へとひろがっていきます。庶民は、武士ではありませんから、幟旗などを立てることは許されていませんでした。そこで代わりに、鯉のぼりをあげるようになるのです。鯉は、清流だけでなく池や沼でも生息することができる、非常に生命力の強い魚です。その鯉が急流をさかのぼり、「竜門」という滝を登ると竜になって天に登るという中国の伝説(「登竜門」という言葉の由来といわれています)にちなんで、子どもがどんな環境にも耐え、立派な人になるようにとの立身出世を願う飾りというわけです。やがて庶民は、端午の節句に、鯉のぼりだけでなく紙の兜や人形を作るようになり、それが武者人形・五月人形などに発展していきました。



端午の節句には、柏餅を食べるのも風習の一つです。「柏(かしわ)」は、新芽が出ない限り古い葉が落ちないので、このことから家が絶えない、後継者が絶えることがないと、縁起のいい植物として考えられていました。この柏の葉を用いる柏餅は、すでに室町時代末期頃から、広く食べられていたと言われています。



先ほども申しあげたように、菖蒲は、同じ読みである「尚武(しょうぶ)~武を尊ぶ」、また「勝負」という語に通じること、そして葉の形が刀のさやのようであることからから武の象徴とされ、男の子が世の中で負けることなく、たくましく育つように、という祈りをこめて飾られてきました。



五節句では、それぞれの時期に咲く植物の力を借りて、魔除けや厄除けを祈念するというのが特徴の一つです。ですから菖蒲を飾る端午の節句は、菖蒲の節句ともいわれるのです。古くから菖蒲は、香りがあり、強い解毒作用があるため胃薬として、また打ち身などに効く薬草として用いられてきました。その薬効から、端午の節句にはお風呂に菖蒲の葉をうかべる、「菖蒲湯」につかって体を清め、疲れをいやす風習ができたのだと言われています。また、古代中国の宮廷では、端午の節句には、菖蒲の根を刻んで酒に浸した、菖蒲酒を飲む習慣があったそうです。また端午の節句に菖蒲をヨモギと対にして軒先にかざることで、魔除け、厄除けとしても用いられていました。これは軒菖蒲と呼ばれていたのだそうです。



ところで、この菖蒲、実はハナショウブとショウブという二つの種類があり、両者はまったく別の植物だということを皆様はご存知でしょうか?香りがあって、薬効があり、葉をお風呂に入れて菖蒲湯にするのは、本来のショウブです。しかし、ショウブの花はあまり美しくなく、地味なのです。そこで、ショウブと葉の形がそっくりで、かつ美しい花を咲かせる植物をハナショウブと呼び、花を飾るのにはこのハナショウブを用いるようになりました。ただ、ハナショウブの葉は、ショウブと形が似ているものの、葉が細すぎて生けるのには向いていません。ですから、端午の節句の時期に花屋さんで売られている「菖蒲」は、本来のショウブの葉と、ハナショウブの花を組み合わせたものなのです。



菖蒲にまつわる表現をひとつ、ご紹介いたしましょう。「六日の菖蒲」というのですが、12月25日のクリスマスの日を過ぎたケーキは意味がないと同様、端午の節句の「五日」の翌日、「六日」に菖蒲を用意しても遅いということで、「時期を過ぎたものは価値がなくなる」という意味で使われます。菖蒲が端午の節句にとってなくてはならないものだということを表している表現といえるでしょう。



菖蒲を愛でる、端午の節句。男の子の節句ではありますが、私たち女性も、ハナショウブを楽しみながら季節を感じるというのも、いいかもしれませんね。




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