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vol.24 笹にのせる、星のめぐり逢い~七夕~


7月7日は、七夕です。織姫と彦星が一年に一度だけ逢瀬を楽しむことができるという伝説があり、ロマンチックな恋人たちの日とも言えるかもしれません。七夕は、五節句の一つに数えられており、昔から大切に祝われてきた行事です。他の五節句の行事と同様、季節の植物の力を借りて魔除けをしようという意味がありますが、皆様ご存じのとおり、七夕飾りには笹が使われますので、笹の節句とも言われます。今回は、そんな七夕と笹についてお話しいたします。



まずは、七夕の歴史をひも解いてみましょう。他の五節句と同様、もともと七夕は、中国の宮中行事が伝わったものですが、そこに日本古来の行事が合わさって、現在のような七夕になったと言われています。



そのいくつかの行事とは、まず一つめが、中国の「乞巧奠(きっこうでん、もしくは、きこうでん)」と言われる行事です。もともと7月7日に行われていた行事で、機織りの名手とされていた星である織女星(織姫)にあやかって、お裁縫や機織りが上達するようにと願うお祭りでした。祭壇を設け、針や五色の糸をそなえて、お祈りしたのだそうです。この行事が日本に伝わり、宮中や貴族の家で行われるようになりました。「五色」の糸や織女にお祈りをするところに、七夕のヒントを見ることができますね。



二つ目の七夕の要素には、「牽牛と織女の物語」があります。彦星と織姫とも言われますが、こちらも中国から伝わった伝説です。牽牛星とはわし座のアルタイルという星で、農仕事をつかさどる星とされており、織女星はこと座のベガで、先ほどもお話しした通り裁縫や機織りをつかさどる星とされていました。7月7日ごろ(当時は旧暦)、この二つの星が一層輝いて見えることから、天の川を挟んで輝く二つの星がこの日に出会う、という七夕の伝説、牽牛と織女のロマンチックな物語ができたのだと言われています。



三つ目には、日本古来の行事があります。これが「たなばた」の語源になったとも考えられている行事で、「棚機(たなばた)」という神事です。巫女が選ばれ、その巫女は「棚機女(たなばたつめ)」と呼ばれました。その棚機女が着物を織って棚にお供えし、神様を迎えて豊作を祈り、人々のけがれをはらいました。その着物を織るのに使われた織り機を、棚機と呼んでいたのだそうです。さらに、この神事に、祖先の霊に豊作を祈るお盆が合わさり、この行事が7月7日の夕方に行われるようになったことから、七夕と書いて「たなばた」と読むようになったのです。



いまでは七夕といえば笹、と言われるほどの笹飾りですが、もともと七夕が伝わる前から、わが国では、笹は成長が早くまっすぐに伸びることや、葉のすれあう音が神を招くとして、祖先の霊がやどる依代(よりしろ)とされていました。そして、人々のけがれを移した笹竹を、川や海に流していたのです。



七夕に笹を立てるようになったのは、先ほどお話しした三つの行事が合わさるようになった室町時代の頃からのことです。万葉集にはすでに「たなばた」の行事の記載がありますので、宮中や貴族の間では奈良時代の頃には七夕が祝われていたようですが、笹が立てられるようになったのは日本独自のことと言えます。江戸時代になると七夕の行事が庶民にも伝わり、願いごとを書いた短冊や色紙を下げるようになりました。この短冊は、七夕の歌にもあるように「五色」とされていますが、これは中国の「五行説」にならって、それぞれ「木、火、土、金、水」を表す「緑、紅、黄、白、黒」が使われていました。さらに、江戸時代末期にはそろばん、すずり、筆なども笹に下げ、家の庭に立てるようになり、現在の七夕飾りのもととなったようです。



さて、皆様は、笹と竹の違いをご存知でしょうか?なんとなく、太く長く伸びるのが竹、細く短いのが笹という気がしますが、植物学的な見分け方は、皮が落ちるのが竹なのです。たけのこが取れるころの竹林には、たくさんの皮が落ちています。これは竹が皮を落とすからであり、笹はこのように皮が落ちません。私達がよく目にする竹は、たけのこにもなる孟宗竹(もうそうだけ)という種類で、江戸時代初期に中国から伝わりました。



現在でも、全国各地で七夕まつりがありますし、七夕に近くなると、さまざまな場所で笹飾りや短冊を見かけます。イベントとして短冊を書かせてくれるところもたくさんありますので、皆様も、あらためて夜空の牽牛星・織女星に思いをはせ、笹に願いをのせてみてはいかがでしょうか。何か素敵なことが起こるかもしれませんよ。



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