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vol.25 夏を涼やかに彩る、ユリ


日本語には、美人を形容するさまざまな言葉や表現があります。女性を花にたとえているものも多くありますが、その中の一つが、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」というもの。きっとご存知の方も多い表現でしょう。ここに登場する花の中で、歩く姿の美しさに形容されている、ユリ。風に揺れるユリの花の姿が美しいということから、ユリは歩きながら見るのが一番美しいとも言われます。また、ユリは女性の名前に多く用いられていますし、かぐわしい香りが高貴な雰囲気を漂わせます。今では一年中手に入るイメージがありますが、実は、夏の花です。今回は、そんなユリについてお話しいたします。



ユリというと、皆様が一番に思い浮かべるのはカサブランカではないかと思います。白い大輪のユリで、大変香りのよい花を咲かせます。バブルの頃一気にブームになり、もてはやされてから、今でも白ユリの代名詞のような花です。大変華やかで、洋風の雰囲気がありますが、実は、日本にルーツを持っているのです。といいますのは、日本には昔からユリが自生していましたが、その日本固有の種をもとに品種改良されて、カサブランカが作られたからです。



北半球の幅広い地域に生息するユリは、日本でも、ヨーロッパでも、古代から愛されてきました。紀元前15世紀頃のものといわれるクノッソスの遺跡で、白ユリの一種であるマドンナリリーの描かれた壁画が見つかっているほか、メソポタミアや古代エジプトでも、文様に描かれていました。また中世の頃からキリスト教において、マドンナリリーが聖母マリアの象徴とされ、絵画にはマリアとともにその花が描かれました。



日本では、最古の記録として、古事記にユリが登場します。「神武天皇がユリを摘んでいる娘を気に入って妻にした」という物語です。これを現在に伝える行事が、奈良県の率川(いきがわ)神社で行われる三枝祭(さいくさのまつり)で、別名ゆりまつり、とも呼ばれています。また、万葉集では10首の歌にユリが詠まれています。



しかし、ユリは花を観賞するというよりも、主に薬として用いられていた植物でした。盛んに花が楽しまれるようになったのは江戸時代になってからと言われています。幕末の頃には、シーボルトらによってヨーロッパに日本のユリが紹介され、ユリの球根が盛んに輸出されるようになりました。そのときに輸出され、有名になった品種の一つが、テッポウユリです。テッポウユリは、栽培が難しかったマドンナリリーに代わって、イースターに飾られるユリ、イースターリリーとしてヨーロッパでも盛んに育成されるようになります。その他にも日本のユリが輸出され、それらの品種をもとにユリの品種改良がようやく盛んになったのは、19世紀末のことでした。意外にも、ユリの品種改良の歴史は浅いのです。



さて、ユリは花よりも薬用として用いられてきたとお話ししましたが、もう一つ、私たちに身近な用途があります。そう、食用です。ユリの球根が、茶わん蒸しなどに入っているユリ根です。ただし、すべてのユリの根が食べられるわけではありません。多くの品種はアクが強いので食べるのには向いていませんが、アクの少ないコオニユリ、ヤマユリなどが食用に栽培されています。



ユリは、英語ではリリーと言いますが、その語源は、ケルト語で「白い花」という意味を持つ語であったと言われています。やはりユリというと、白い花のイメージが強いということでしょうか。しかし実際には、黄色、オレンジ、ピンク、赤などの色のものもあります。



日本語の「ユリ」の語源は、花が風に揺れるという「揺り」からきているという説や、球根の形が鱗が重なるようにできていることから「寄り」という語が転じて、など諸説ありますが、はっきりとはわかっていません。しかし、漢字の「百合」は、2~3世紀頃の中国の書物に「百合(パイホ)」という記述があり、これが日本に伝わって「ユリ」を表す字として使われるようになったと言われています。



ユリの花は、つぼみから花が咲ききるまで、長く楽しむことができます。しかし気を付けなければいけないのは、花粉です。ヨーロッパでは、花粉のない花はかえって不自然に見える、と花粉をそのままにすることが多いのですが、衣類などに付着しないように、日本の花屋さんでは、開花とともに花粉を取り除くのが一般的です。もしも衣類に花粉がついてしまったときには、手で払わないように!手の脂分によって、花粉が染み付いてしまいます。そのまま花粉をよく乾燥させてから、粘着テープで布を軽くたたくようにしてください。これでたいていの花粉は、取れるはずです。お手入れの方法を知っていれば、もう怖くないですね!



ユリの花に触れて、美人のエッセンスを取り入れてみるのも、女磨きのひとつかも?しれませんね。香りも豊かな気持ちにさせてくれます。ぜひお試しになってみてください。




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