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vol.26 ラッパのような形をしたクールな花、カラー


すっと真っ直ぐに伸びている、カラーの花。白い花には純粋で清楚な雰囲気があり、ウェディングブーケとしても人気です。ウェディングブーケでは、ナチュラルステムと言われる、茎を長く残し、自然な雰囲気で束ねるブーケが多いですね。切り花は一年中手に入るので、ウェディングに限らず、さまざまな用途に使うことが出来ます。みなさまカラーの花には白のイメージをお持ちなのではないでしょうか。しかし品種改良によって、黄色、オレンジ、ピンク、赤紫色、黒紫色、グリーンなど、実はさまざまな色のものが出回っていますので、多様な表情を見せてくれます。


カラーは、江戸時代末期に、我が国に伝わりました。オランダ商船によってもたらされたと言われています。そこから、「オランダカイウ」という和名がつきました。「カイウ」とは、「海芋」と書くのですが、カラーの球根が芋の形に似ているので、海を渡ってきた芋、という意味でつけられた名と考えられています。


ちなみに漢名は、馬蹄蓮(ばていれん)といいますが、花の形を馬のひづめの形にたとえて、その名がついたのでしょう。英語では、カラーリリーと呼ばれています。修道女の白い襟(えり)のかたちと花の形が似ているので、襟は英語でカラーですから、カラーリリーと言われるようになったとの説が有力です。



しかし、カラーの名は、もともとギリシャ語で「美しい」という意味のある「カロス」という語が語源であると言われているのです。ギリシャ神話に、その名の通り、カラーの花の美しさを象徴する伝説がありますので、ご紹介いたしましょう。



カラーの花は、全能の神ゼウスの妻である女神ヘラが、ヘラクレスにお乳を飲ませていたとき、こぼれたミルクからできた花だと言われています。そこから、ギリシャ神話では、カラーの花は女神ヘラの象徴とされています。あるとき、カラーの花を見た美の女神ヴィーナスは、その美しさに嫉妬して、少しでも醜く見えるようにと、その花の中心に棒のような部分を作ったのだそうです。それがいまのカラーの姿になっているということですが、美の女神に嫉妬されてしまうほどにも美しい花だということですね。先ほど、カラーはオランダ商船によって我が国に伝わったとお話ししましたが、原産は南アフリカです。南アフリカでは、カラーの原種が8種ほど生息しています。それがヨーロッパにもたらされ、日本に渡ってきたというわけです。



カラーはサトイモ科の植物ですが、ちょっと変わった形をした花をつけるのが、サトイモ科の特徴でもあります。アンスリウムなどもサトイモ科ですが、どちらも、花のように見える色づいた部分は厳密には花ではなく、苞(ほう)です。花は、中心の棒のような部分に小さな花が集まって付いています。苞とは、葉が変形したもので、花の部分を包み込み、花を守る役割を果たします。サトイモ科の植物は、ぐるっと花を取り囲むようにできる苞が特徴的で、その様子を、仏像の背後にある炎のような背景にたとえて、仏炎苞(ぶつえんほう)と呼んでいます。



サトイモ科、とすぐわかるかのように、サトイモの花はカラーに似ています。色は黄色で、そっくりな形です。サトイモはインド東部やインドシナ半島原産なのですが、日本には中国を通じて伝来し、古代から食用として栽培されていました。そんなにも昔から食され、今も私たちの食卓に並ぶ食材であるサトイモの仲間が、あの凛とした表情を見せるカラーの仲間だと思うと、植物とは不思議なものだと改めて思わされます。



さて、切り花の印象が強いカラーですが、鉢物としても人気があります。地植えもできますし、室内で楽しむ観葉植物にもなります。鉢をみると、切り花ではあまり見ることのできない葉が印象的なことに気づくでしょう。矢じりのような形や、ハート形をしていて、斑点がはいっているものもあります。まれに、葉がカラーの花と一緒に切り花で出回ることもありますが、葉も使い勝手がよく面白いので、見つけた時には是非試してみていただきたい花材です。



カラーをいけるときには、茎に注意してください。まっすぐな緑色の茎が、カラーの花の美しさをいっそう引き立てます。しかし、カラーの茎は、太いものであってもやわらかいので、簡単に折れてしまいます。細いものは、長くいけると花の重さだけで折れてしまうこともありますから、短くいけるか、器にもたれさせるなど工夫してみてください。また、生けたままにしておくと茎が溶けてきてしまうので、こまめに切り戻しや水替えをしてください。お手入れさえすれば、比較的長持ちしますので、夏でも長く楽しむことができます。涼しげな印象もありますので、カラーをお部屋に飾って涼をとるというのも、面白いかもしれませんね。




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