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vol.27 ハート型、それともうちわ?~アンスリウムのお話~


季節が夏に近づいてくると、私たちの夏気分の高まりとともに、お花の市場には熱帯の花のバラエティが豊富になってきます。トロピカルな花たちを見ていると、いよいよ夏本番という気持ちになってきますが、中でも、特に鮮やかな色を放ち、目立った存在のひとつが、アンスリウムです。アンスリューム、アンセリウムなどと呼ばれることもあります。ハート型のつやつやとした表情、なんだか天狗の鼻のようにも見える、棒のような部分がついていて、なんともエキゾチックな雰囲気を持つ花です。今では、夏に限らず一年中手に入りますが、今回は、一輪だけでもリゾート気分を高めてくれる、アンスリウムについてお話しいたします。



アンスリウムは、皆様トロピカルな暖かい気候に似合う花というイメージをお持ちかと思いますがその通りで、熱帯アメリカが原産です。600~700種にもわたる品種が、メキシコからパラグアイまでにわたる広大な地域に分布しています。意外に聞こえるかもしれませんが、アンスリウムはサトイモ科に属していて、サトイモ科のなかでも最も多様な品種を誇るのだそうです。花を楽しむ品種が多く出回っていますが、実を楽しむ種、葉を楽しむ種など、さまざまな種があります。



あの、花のように見えるハート形の色鮮やかな部分は、実は花ではありません。葉が変化したもので、正確には「仏炎苞(ぶつえんほう)」といいます。実際の花は大変小さく、花の集まりが棒のように突き出ている部分に付いています。派手な色の仏炎苞によって虫などをそちらに寄せ付け、大事な花を守っているというわけです。



特殊なその形状は、アンスリウムの名前そのものを表しているともいえます。語源はギリシャ語にあるとされていますが、「花」を意味する「アンサス」と「尾」を表す「オウラ」という語に由来しているといわれます。つまり、「尾のような花」。まさに、突き出た花の部分を動物の尾に例えたことからついた名前なのです。ちなみに、和名では大紅団扇(オオベニウチワ)といわれ、やはりこれも仏炎苞の形状からついた名前だと推測できます。



現在私たちが目にするアンスリウムは、ほとんどが輸入ものです。だからこそ年中手に入るのですが、そのほとんどが、近隣の国ということもあり台湾産です。アンスリウムが日本に入ってきたころは、ハワイ産や原産地である熱帯アメリカのものが多かったそうです。



なかでも、ハワイ産のアンスリウムは我が国と関係が深いといえます。といいますのは、ご存じのとおりハワイには多くの日系人の方が住んでいますが、アンスリウムの栽培や開発も、彼ら日系人の手によってなされたからです。中でも、ハワイ島のヒロという町のアンスリウム栽培は有名で、彼らによって研究されたアンスリウムの品種には日本語の名前がついているものが多くあります。ミドリ、オバケなどがその代表です。ミドリはその名の通り、淡いグリーンの色がきれいな花です。面白いのは、オバケ。よく、オバケアンスリウムと呼ばれますが、仏炎苞が最大で30センチにもなるものもある、オバケのように大きな品種です。このように大きな仏炎苞をもつアンスリウムの通称となっているオバケですが、まさか日系人がつけた名とは思いませんよね。ですから、英語でもObakeという名で通っているのです。ちなみに、オバケの由来ですが、かつて、「子供たちを夜遅くまで外で遊ばせないために、大きなアンスリウムが咲いているのを指して、オバケがいるよ!と脅かしていた」ことからその名がついたのだそうです。言われてみれば、暗がりであの大きな顔のような形をしたアンスリウムを見たら、ちょっと不気味な気がしますよね。



さて、アンスリウムの利点として、とにかく花持ちがよい、ということが挙げられます。切り花で、夏場でも2週間程度もちますので、夏にはありがたい花です。ただし、長持ちするとはいえ、仏炎苞の部分は傷がつくと茶色く変色してしまいますので、丁寧に扱ってください。あまり出回りませんが、アンスリウムの葉もハート形をしていて、面白い花材になります。



元気のないアンスリウムは、バケツなどに深く水を張って、逆さにして全体をつけておくと、ピンとするので試してみてくださいね。



アンスリウムは観葉植物として、鉢で楽しむこともできます。葉も常緑できれいですが、やはり花持ちが良いので、長い間楽しむことができます。熱帯の植物ですが、以外にも直射日光には弱いので、カーテンごしに日を当てる程度にして、室内で観賞するようにしてください。



他の花材との合わせ方によって、洋風にも和風にも生けることができる、アンスリウム。早速取り入れて、元気なトロピカル気分を味わいたいですね。花の向きを傾けると、また違った表情が出ますので、くるくるとまわしながら新しい表情を探してみても面白いと思いますよ。




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