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vol.32 クリスマスに咲いているの?~クリスマスローズのお話~


やはりお花というと春が本番、寒い冬にはあまり外で自生している花を見かけないようなイメージですが、探してみると、厳しい冬に可憐に花を咲かせる植物もあります。なかでも、特にここ数年、ガーデニングがお好きな方たちを中心に人気があるのが、クリスマスローズです。クリスマスのバラだなんて、名前からして、素敵なお花ですよね。では、さっそくクリスマスローズの魅力に迫っていきましょう!



クリスマスローズは、正式な学名をヘレボルスという植物です。20種ほどの原種があるのですが、その原種のひとつ「ニゲル(ノイガーとも)」が、クリスマスの頃に白く可憐な花を咲かせるということでクリスマスローズと呼ばれており、本来欧米ではニゲルだけのことを指してクリスマスローズと呼ばれていたのですが、日本ではヘレボルス全種をまとめてクリスマスローズと呼んでいるのです。ですから、欧米でニゲル以外のヘレボルスを指して「クリスマスローズ」と言っても通じないことがありますのでご注意ください。



このニゲルももちろん流通していますが、いま日本で数多く出回っているのは「オリエンタリス」という種とその交配種である「オリエンタリス・ハイブリッド」です。こちらは春咲きの種ですので、クリスマスローズという名前なのに春に咲いている、というちょっとした季節のズレは、この日本特有の呼び方によって起こってしまったことなのです。このオリエンタリスは、ヨーロッパでは、その咲く時期がちょうど春のレント(イースターの前の40日間のこと。年により異なるがレントは2月中旬から3月中旬ごろ)の頃ということで、レントの頃に咲くバラ、「レンテンローズ」と呼ぶこともあります。



クリスマスローズの魅力の一つは、このオリエンタリスの交配種のバリエーションの豊かさにあります。一つとして同じ花がない、とも言われることがあるほどです。白、黄色、ピンク、紫、黒、グリーンといった色の違い、一重・八重咲きなど咲き方の違い、花の形の違い、また斑点のような模様が入るものや、花の内側と外側の色が違うもの、葉の形にも違いがあります。これらがほぼ無限に組み合わされると、どれだけ多様なバリエーションがあるのか、ご理解いただけるのではないかと思います。さらに長年にわたって繰り返されてきた交配によって、想像もできないような花が新しく生まれる可能性を多分に秘めており、その神秘的な可能性が、クリスマスローズのファンの方たちをひきつけて離さない奥深さともなっているのです。さらに日本の気候によく合い、また強い植物なので育てやすく、毎年花を咲かせる多年草であることも、人気の一つとなっているようです。



近年では、出回る季節に限りはあるものの、切り花としてもよく見かけるようになってきました。他のお花と束ねるとアクセントになりますし、また個性的な雰囲気を出すことができるので、ウェディングブーケに利用されることもあります。そもそも、クリスマスローズが日本にもたらされた明治時代には、切り花として茶花に使われることが多かったようです。いまでも、クリスマスローズは和名である「初雪おこし」「寒芍薬」「八手花笠」などと呼ばれ、お茶席を彩っています。



実はクリスマスローズの花びらのように見える部分は、「がく片」といわれるもので、花びらではありません。おしべの付け根にある蜜腺というものが、花びらが退化したものなのです。つまりクリスマスローズはがく片を花として楽しむことができる「散らない花」なのです。散らないので、花を長く楽しむことができます。そこから、縁起の良い花と言われることもあります。



そんな縁起の良いクリスマスローズにまつわる伝説をご紹介いたしましょう。これは、最初にご紹介したニゲルについてのお話です。~~イエス・キリストが誕生したとき、お祝いに集まった人々の中に貧しい羊飼いの少女がいました。幼いイエスの誕生を心から祝いたいと少女は思うのですが、冬の厳しい寒さの中、捧げられるような野に咲く花はありません。そこへ悲しむ心優しい少女のもとへ天使が舞い降り、少女の落とした涙に天使が触れると、なんとも美しい、真っ白いバラのような花が現ました。その花はその後、クリスマスローズ(ニゲル)と呼ばれるようになったということです。~~



美しく可憐に私たちをひきつけるクリスマスローズ。しかし、実は毒性を持つ植物でもあります。植物の汁に毒が含まれていますので、小さなお子様やペットなどのいる方は扱いにご注意ください。そこさえ気を付ければ、育てやすく扱いやすいお花です。展示会なども各地で行われていますので、ぜひ一度、ご覧になってみてはいかがでしょうか?




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