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vol.35 節分には魔除けの柊を


「鬼は外!福は内!」の掛け声とともに豆まきをする行事と言えば、皆様ご存じのとおり、節分です。節分は私たちには2月の行事、としてなじみがありますが、「季節を分ける日」という意味で節分と言われているため、本来は春・夏・秋・冬それぞれの季節の始まりの日である立春・立夏・立秋・立冬の「前日」を表しています。しかし、江戸時代以降は特に、私たちが親しんでいる2月の節分、つまり春が始まる立春の前日の節分のことを指して主に節分というようになりました。今回は、私たちが知っているようで知らない節分について掘り下げてみましょう。



節分の行事は、中国から伝わった「追儺(ついな)」という儀式と日本で古来より行われてきた「節分」とが合わさってできたと言われています。追儺の儀式とは、魔除け、邪気祓いをするもので、平安時代に中国から伝わりました。鬼が嫌うと信じられていた桃の枝で作られた弓で葦(あし)の矢を射り、鬼を追い払い、1年の悪疫を祓って無事に新年を迎えるための行事で、大晦日の夜に宮中で行われていました。



また中国から伝わった暦である「二十四節気」では、「立春」を四季が一周りした日、1年の最初の日であると考えられています。その前日にあたる節分は、1年の最後の日である大晦日と同じ意味を持ちます。そのため、1年の厄を祓う意味を込めて、いつの頃からか追儺の儀式は二十四節気上の大晦日である立春の前日に行われるようになり、その儀式そのものを「節分」と呼ぶようになりました。そして、宮中行事であった追儺や節分は、次第に庶民の間にも広まっていったのです。



さて、豆まきによって鬼を追い払うのは、ある伝説がもとになっていると言われています。その昔、京都の鞍馬山に鬼が住んでいて人々を苦しめていました。そこへ七福神の一人、毘沙門天が現れ、三石三斗(約600 リットル)の豆を鬼の目をめがけて投げるように言いました。悪魔のような鬼の目、つまり「魔目(まめ)」めがけて豆を投げれば「魔滅(まめ)」できる、という語呂合わせにつながるわけです。



もともと、豆まきに使われる大豆は満州が原産地とされています。中国ではしたたかな生命力をもつこの穀物を重要視し、祭礼や儀式で用いられてきました。それが日本に伝わり、五穀の一つである大豆には穀霊という精霊が宿るとされ、米に次いで神事に用いられてきました。米よりも粒が大きいため、穀霊で悪霊を祓うのに最適であることや、まいた豆から芽が出ると良くないといわれていることから、豆まきの大豆は生ではなく煎ったものを使用するのです。



近頃は、節分の風習として豆まきだけではなく「恵方巻き」も注目されるようになってきましたね。もとは関西地方特有の風習だったようですが、全国に広まってきました。その年の歳神様がいる方位である恵方に向かって、太巻きをまるかじりすると縁起が良い、というものです。



しかし、もうひとつ、節分に欠かせないものがあるのを、みなさまご存知でしょうか。鬼が大嫌いな、鰯(いわし)の生臭い臭いと、鬼の目を刺すと言われるトゲのある柊(ひいらぎ)の葉を利用します。鬼が癒えの中に入ってこないようにするために、鰯の頭を焼いて臭いを強くしたものを柊の枝に刺し、それを玄関先にとりつけるのです。これは「柊鰯(ひいらぎいわし)」「焼嗅(やいかがし)」「柊刺し」などと呼ばれていますが、昔から臭いの強いもの、トゲのあるものは魔除けや厄除けの効果があるとされています。節分の食卓に鰯が登場することが多いのも、この柊鰯からということですね。



柊鰯に用いられる柊ですが、日本にも自生するアジア原産のモクセイ科の植物です。とげのある葉の形が特徴的ですが、そのヒイラギという名前の由来もこの葉の形からきています。このとげにさわると痛くてひりひりすることから、「ひいらぐ(ひりひり痛む)木」→「ひいら木」→「ひいらぎ」になったといわれています。年数を経て老木になるとトゲがなくなって葉が丸くなります。人も、年を取ると性格が丸くなる、といわれますがそれと似ているようで面白いですよね。また、クリスマスによく使われる赤い実の付いた柊は、イングリッシュホーリーというセイヨウヒイラギで、まったく別の植物です。柊鰯に使う日本の柊には、赤い実はつきません。



いまは柊を節分に飾るというお宅もあまり見かけなくなってきましたし、花屋さんで柊の枝を手に入れるのは少々難しいかもしれませんが、今度の節分には、豆まきや恵方巻きだけではなく柊をディスプレイに用いるというのはいかがでしょうか。葉の形がよく似た、「柊南天」でしたら比較的手に入りやすいと思いますので、こちらで代用するというのもおすすめです。ぜひお試しになってみてくださいね。




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