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vol.36 水栽培でも楽しめる香りの花、ヒヤシンス


春先には香りのよい花が市場に沢山登場しきます。ヒヤシンスもその一つ。香りの世界でグリーンノート系といわれている、とても爽やかな香りがします。ガーデニングなどの球根や鉢植えはもちろん、切り花でも2月ごろから3月にかけて多く出回るようになります。今回は、香りの春の花、ヒヤシンスについてお話しいたします。



ヒヤシンスは「ヒアシンス」、とも表記されることもありますが、地中海に面した国々、シリアやトルコ、ギリシャのあたりが原産地と言われています。同じ属のヒヤシンスの仲間は、主に地中海沿岸から中央アジアにかけて30種ほどが知られていますが、ヒヤシンスは、この花を愛好していたオスマン帝国の王が、16世紀の終わりに5万本ものヒヤシンスをイスタンブールに集めさせたとの逸話があるほど、当時から愛されていた花だったようです。



16世紀ごろにはすでにヨーロッパにもたらされ、イタリアやイギリスで品種改良が進められました。18世紀ごろからはオランダでも品種改良が盛んに行われるようになり、現在多く栽培されているのは、この流れをくむダッチヒヤシンスです。オランダで改良されたダッチヒヤシンスは最盛期には2,000以上の品種が作り出されました。現在栽培されているのは40~50種と言われています。これは1本の茎に青、ピンク、白、クリーム色などの花を多数つけ、大変華やかな印象です。密になった花の咲き姿が美しいことから、切り花として栽培されているのも、ほとんどがダッチヒヤシンスです。



また、ローマンヒヤシンスと呼ばれる種がありますが、こちらはやや小さい青や白の花をつけます。ダッチ系に比べるとローマン系は花付きがまばらで草丈も小さく、楚々とした印象をもたれますが、そこだけ見てローマン系が劣っていると思ってはもったいない!可愛らしく野趣があり、なにより丈夫で、球根で植えておくと自然によく増えるのです。反対にダッチ系は、増えにくい品種です。



日本にもたらされたのは江戸時代末期の安政期、19世紀の中ごろです。香りが良いことから、当時から盛んに栽培されていたようです。当時は「ヒヤシント」または夜香蘭や錦百合という和名で呼ばれており、特に黄色の花をつける種は黄水仙とも言われたようです。明治時代になると「飛信子(ひやしんす)」「風信子(はやしんす)」などの字が当てられ、現在でもその当て字が残っています。香りが風に乗って飛んでくる、ということからつけられたのでしょうか。一般にヒヤシンスの花が広まったのは大正時代中期以降です。



そもそも、ヒヤシンスという名はギリシャ神話に出てくるヒュアキントスという美少年に由来するのですが、この花にまつわるお話しはちょっと悲しいお話なのです。悲劇ではありますが、ご紹介いたしましょう。



~~ヒュアキントスはとびきりの美少年でした。そんな少年を神々が放っておくはずがありません。彼は太陽神・アポロンに愛され、いつも一緒に過ごしていました。しかし、西風の神ゼピュロスもまたこの少年を愛してしまったのです。しかしヒュアキントスは、アポロンのほうが好みだったようで、相手にしませんでした。ある日、アポロンとヒュアキントスが楽しそうに円盤投げをしているのを見たゼピュロスは、二人に嫉妬し、アポロンが円盤を投げたその瞬間に、意地悪な強い風を起こし円盤を吹き飛ばしたのです。そしてそれは運悪く、不幸にもヒュアキントスの額に当たってしまいました。少年は血を流して倒れ、アポロンの腕のなかで息絶えました。血に染まった草の上にアポロンの涙がこぼれると、そこには今までに見たこともないような美しい花が咲き、その花がヒュアキントス(ヒアシンス)と呼ばれるようになったのでした。~~



さて、切り花でヒヤシンスを楽しむなら、おすすめはブーケです。数本でもヒヤシンスの香りを十分に楽しむことができるでしょう。香りのあるほかの花と合わせても、ヒヤシンスのグリーンノート系の香りはマッチします。アレンジメントには、ヒヤシンスは茎が太くやわらかいので、あまり適しているとは言えません。



長く楽しみたいという方には、室内での水栽培がおすすめです。球根は、「水耕栽培向け」もしくはダッチヒヤシンスと書いてあるものを選んでください。専用の容器も販売されていますが、自宅にある花瓶などでも構いません。11月ごろ植え付け、根が出るまでは涼しく暗い場所に置いておき、12月ごろは外で管理し寒さにあて、1月頃日当たりのよい室内に入れるようにすると、花が良く咲きます。水栽培は一度花を咲かせると次の年に咲かせるのは難しいと言われていますが、室内で身近に楽しめるのが魅力です。



貴女なりのヒヤシンスの楽しみ方、ぜひ見つけてみてくださいね。




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