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vol.37 黄色い花?白い花?~ミモザアカシアのお話~


黄色くてふわふわの、まるい花をたくさんつけるミモザアカシア。ヨーロッパでは春を告げる花のひとつとして、親しまれています。日本でも、庭木で花をみかけたり、切り花が市場に出回ったりするのは2月から3月にかけてのこと。ミモザという名前だけは知っている、という方もいらっしゃると思いますが、「ミモザアカシア」という名は、実は少し紛らわしい名でもあるのです。今回は、ミモザアカシアにまつわる謎をすべて、解き明かしてまいりましょう。



ミモザアカシアは、植物学上、マメ科アカシア属に所属していますが、アカシア属の仲間は、オーストラリア原産のものが700種以上、アフリカ原産のものが150種以上と、大変多くの種が存在しています。オーストラリアの国花とされており、現地ではワトルと呼ばれて親しまれています。一般的にミモザアカシアといわれて切り花で出回っているのは「フサ(房)アカシア」もしくは「ギンヨウ(銀葉)アカシア」といわれる種です。フサアカシアは甘い香りがし、香料として用いられています。この花からとれた香水もあります。ヨーロッパで広く分布しているのはこちらです。銀葉アカシアは、黄色い花がフサアカシアよりも大きく、華やかさがあるため、切り花で重宝します。その名の通り、銀色がかったきれいな色の葉をしています。他にも、葉に特徴がある「サンカクバ(三角葉)アカシア」、「ナガバ(長葉)アカシア」、「スギバ(杉葉)アカシア」などがあり、これらはミモザアカシアと呼ばれることは少ないのですが、やはり同じようなふわふわの黄色く丸い花を咲かせます。



さて、「ミモザ」といえば、カクテルを思い出す方もいらっしゃるかもしれません。シャンパンとオレンジジュースを同量ずつで割ったものですが、鮮やかな黄色であることから、ミモザの花の名がつけられたのでしょう。ミモザサラダというメニューもあります。こちらも、ゆで卵の黄身を裏ごししてふわふわにして、その形がミモザの花に似ていることからその名がつけられています。また、ミモザという砂糖菓子があるのですが、みなさまご存知でしょうか?まさにミモザの花そのもの、5~7ミリほどの球体の黄色い砂糖菓子で、ケーキの装飾などに使われることもあります。



このように、ミモザアカシアは通称「ミモザ」と呼ばれているのですが、本来ミモザという語は、植物学上ではオジギソウ属の学名なのです。ミモザの花をご存知の方は、黄色い花を連想する方がほとんどではないかと思うのですが、学名では別の植物を指す語とは、ちょっと紛らわしいですよね。ちなみにオジギゾウはミモザアカシアと同じマメ科の植物で、ミモザアカシアのような丸いふわふわのピンク色の花を咲かせます。



そして、ミモザアカシアの「アカシア」とは、ギリシア語で「とげ」を意味する語からつけられています。アカシアというと、白い花なのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。日本人に最も愛好されているはちみつは、アカシアのはちみつですが、容器をよく見てみると、白い花の絵が描かれています。これは、本当はニセアカシアというミモザアカシアとは別の植物なのです。ニセアカシアは北アメリカ原産の植物ですが、日本に入ってきたときにニセという語が嫌われたせいか、ニセがとれて「アカシア」と呼ばれていたため、ミモザアカシアのような本来のアカシア属の植物と混同されるようになってしまいました。こちらもマメ科の植物ではありますが、ハリエンジュ属という別の属に分類されています。



「ニセアカシア」というのは学名の一部pseudoacacia(「偽のアカシア」)を直訳したものですが、これは通称で、属名と同様、和名はハリエンジュといいます。あまり通称として使用頻度は高くないものの、英語・フランス語でも、ニセアカシア( false acacia, faux-acacia )と呼ばれることもあります。ニセアカシアは花をまるごとてんぷらにするなど、食用にも用いられます。花以外の部分は食べられないのですが。日本の歌謡曲などに出てくる「アカシア」は白い花とされている場合が多く、すなわちニセアカシアのことをさしているのです。



ミモザアカシアはヨーロッパでは春を告げる花と冒頭でお話ししましたが、フランスでは2月にコートダジュールを中心に南仏各地でミモザ祭りが開催されます。1月下旬から3月半ばにかけて、南仏はミモザでいっぱいになります。ミモザの道、といわれる、130キロにわたってミモザの花が咲き誇る道まであるほどです。また、イタリアでは3月8日がミモザの日とされています。世界女性デーであるこの日に、いつもお世話になっている女性に男性からミモザの花を贈るという風習があるのです。私たちもその風習にならって、3月には元気が出る黄色のミモザアカシアの花を楽しみたいですね。




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