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vol.39 お花見と桜の関係
だんだんと暖かくなってきて、春らしくなってくると、外に出かけるのも楽しく、ワクワクしてしまいます。春は、多くのお花が揃う季節。なかでも、毎年私たち日本人にとって欠かせない春の花といえば、桜ですよね。そして、桜といえばお花見がつきものです。お花見!と銘打って見に行く花って、他にあまりないですよね。なぜこんなにも私たちは桜に魅せられるのでしょうか。今回は、桜とお花見について、そのルーツを探ってみたいと思います。
桜は、日本の国花のひとつとされています。もうひとつの国花は菊ですが、桜ほど日本中をにぎわす花もないような気がします。北海道から沖縄まで、日本中に自生しているというのも一つの理由ですが、時期になると天気予報で必ず開花時期が報道されるほど、人々は桜の開花を楽しみに待っているわけです。そして、花が見ごろになれば、私たちはお花見に出かけます。桜の花の美しさに見とれながらお弁当を食べたり、お酒を飲んだりと、年齢に関係なくさまざまな楽しみ方ができますよね。ときおり、お酒のせいか羽目を外してしまう方もいて、そのルールが問題となることもありますが、何はともあれ桜が咲くからお花見をするというのは、ある種、国民的行事といえるのではないでしょうか。
このお花見、実は日本特有の文化だということを皆様はご存知でしょうか?桜は日本各地に自生していると先ほど申し上げましたが、他の国にも生息している植物です。ヨーロッパやアメリカでも、桜の花が見られる場所は多くあります。たとえば、日米友好のあかしとして当時の東京都知事から贈られたという、ワシントンD.C.の桜は有名で、毎年桜まつりが開催されているようですが、日本で見るような「お花見」の仕方をしている人はいないそうです。ですから、日本特有の「お花見」を体験するために、あえて桜の時期にやってくる外国人観光客が近年増えている、という話をあるほどです。
海外では、桜が咲いても木の下に座ったりお酒を飲んだりする人はあまりいません。花を見ながらお散歩するというのが一般的だといわれます。これは、アメリカなど海外では公共の場所での飲酒が認められていない国も多く、法律の違いも理由の一つといえるでしょう。また、ちょうど桜が咲く頃の日本の気候はよく、外で座っていられるということもあります。(ちなみに、沖縄では桜が咲くのは一年のなかで一番気温の低いころであるため、いわゆる「お花見」はあまりしないのだそうです)しかし、それだけでなく我が国特有の「お花見」には昔から日本人が好んできた風情が関わっているようです。

では、日本ではいつごろから花見が楽しまれるようになったのでしょうか。もともとは、花見とは奈良時代に貴族が行事として行っていたものでした。当時は、遣唐使を派遣させ、中国から新しいものが沢山入ってきていた時代。花見の対象になっていたのも、中国からもたらされた梅でした。そのころ梅が、日本に自生していた桜よりも人気があったということは和歌の数を見ると明らかで、奈良時代に編まれた万葉集には、梅の歌が100首ほどあるのに対し、桜の歌は40首程度しかおさめられていないのです。
それが、遣唐使が廃止され、平安時代に入ると、貴族たちは日本ならではの文化を見直すようになり、それに伴って、次第に日本に自生する植物である桜が愛でられるようになります。歌の数も、平安時代前期に編まれた古今和歌集では、桜の歌の方が梅の歌よりも多くなるのです。書物に残る記録として最古の「桜の花見」は、812年(弘仁3年)に嵯峨天皇が催した「花宴」で、これは『日本後紀』に記述が残っています。このころ貴族に愛されていた桜は山桜でしたが、貴族たちはこぞって邸宅に山桜を植えるようになり、都の中でも桜が観賞されるようになっていきました。
鎌倉時代に入り武士の時代になると、桜のはかない散りざまに侍の精神性がなぞらえられ、さらに愛されるようになります。多くの武将たちが花見の宴を催しましたが、なかでも、豊臣秀吉がおこなった「吉野の花見」、「醍醐の花見」はその盛大さで有名です。現在につながる桜=花見=宴会という図式は、これによって定着したのでしょうか。
江戸時代になると、花見の文化は庶民にもひろまります。めったに遠出することのできない町民たちも、桜の花見となれば話は別。着物を新調し、女性は飛び切りのおしゃれをして、お弁当を持っていそいそと出かけたのだそうです。八代将軍吉宗が桜の花見を奨励し、多くの桜の木を江戸各地に植樹したことにより、さらに桜は庶民にとって身近なものとなっていったようです。
このように歴史をひも解いてみると、何百年も昔から、私たち日本人と桜は切っても切れないご縁があるようですね。今年のお花見、皆様はどのように楽しまれたでしょうか?
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