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vol.40 見分けがつきますか?アヤメ、ショウブ、カキツバタ


5月や6月には、端午の節句の主役であるショウブをはじめ、アヤメやカキツバタといった花たちが各地で見られるようになります。これらの花たちは、いけばなの世界でも、季節感を表す重要な花材として、古くから扱われてきました。いけばなだけではなく、着物の柄や絵画などにも登場するなど、歴史とともに愛されてきた花たちなのです。



ショウブやアヤメ、カキツバタといいますと、凛と真っ直ぐに立ち上がる青紫色の花の姿を思い浮かべられるのではないかと思いますが、「いずれはアヤメかカキツバタ」といわれるように、これらは大変似ていて区別のつきにくい花でもあります。また、私たちが普段ショウブと言っている花は、本当はハナショウブといって菖蒲湯などに使う葉のショウブとは違う植物です。(詳しくは「vol.21 端午の節句は菖蒲の節句」の回でお話ししましたのでそちらをご参照ください)ハナショウブはアヤメやカキツバタと同じ、アヤメ科の植物。ショウブはサトイモ科です。しかし、このショウブ、万葉の時代には「あやめ草」と呼ばれていました。ですからそのころは、菖蒲と書いて「あやめ」と読んでいたのです。そのあやめ草に対し、花の綺麗な今のアヤメを「花あやめ」と呼んでいたのだとか。(ハナショウブは江戸時代に品種改良によって誕生したので、この時代には存在していません)平安時代に入ると、菖蒲とかいて「しょうぶ」と読むようになりますが、今でも菖蒲という字は「しょうぶ」とも「あやめ」とも読まれます。同じ漢字で表記されていても、ショウブとアヤメは違う植物ですから、漢字の読みからして、なんだかややこしくなってきましたね。



そこで今回は、このショウブ、アヤメ、カキツバタを比べ、その違いを明らかにしていきましょう。これを読めばあなたも、一発で見分けられるようになること、間違いなしです!



先ほど申し上げたように、アヤメもハナショウブもカキツバタもアヤメ科アヤメ属に分類される植物ですので、広義には、これらの花すべてをまとめてアヤメと呼ぶこともありますが、見分けるポイントがいくつかあります。まずは、生息地。アヤメは、土の乾燥したところでしか育ちません。それに対して、カキツバタは常に湿気があり水が張っているような湿地でしか育ちません。ハナショウブは、土が乾いたところでも湿っているところでも生息します。つまり、畑や花壇で見かけるものはアヤメもしくはハナショウブで、沼地や湿地帯で見かけるものはハナショウブかカキツバタということになります。



続いて、葉と花の生え方です。アヤメは、葉と花がほぼ同じ長さに育ちます。カキツバタは葉の方が長く、花が短めです。ハナショウブは花が葉より長く飛び出して生えるのです。このように生息地と生え方を見れば、これでなんとなく見分けがつきそうですが、さらにわかりやすい見分け方があります。花びらの付け根の模様です。どれも同じような花の形をしていますが、一番大きく垂れさがった花びらの付け根を見てみると、アヤメは、その名の由来にもなった通り、文目(あやめ)模様、つまり網目のような模様が入っています。そのような模様があるのはアヤメだけで、ハナショウブやカキツバタにはありません。その代り、ハナショウブは花びらの付け根に黄色い目型の模様が入ります。カキツバタには、白い目型の模様が入っています。



補足ですが、おおざっぱな見分け方としては、端午の節句に代表されるだけあって、ハナショウブは男性的な印象が、アヤメとカキツバタは女性的な印象を持つ花だとも言われます。「いずれはアヤメかカキツバタ」という表現も、美しい女性たちを比べるのは難しいことだ、ということから生まれたものですから、ここではアヤメもカキツバタも女性のたとえとして登場しているわけです。ちなみにこの表現の意味ですが、ただ見分けがつかないという状態を表しているわけではなく、どちらも優れていて選ぶのが難しい、という意味ですので、混同なさらないようにご注意くださいね。



さあ、これで皆さまも、アヤメの仲間を見分けることができるのではないでしょうか?気候のよくなってくる時期ですし、各地のアヤメ園、菖蒲園などに出かけてみるのもいいかもしれませんね。また、東京近郊にお住まいの方には、絵画で楽しむのもおすすめです。青山にあります根津美術館では、毎年、ゴールデンウィークの頃に国宝である尾形光琳の「燕子花(かきつばた)図屏風」が限定公開されています。花の咲く頃に合わせて、この時期にしか見られないものですから、ぜひ一度はご覧になることをお勧めいたします。





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