• トップ
  • >
  • vol.37 3次元のボタニカル・アート

vol.37 3次元のボタニカル・アート


エミール・ガレの世界



春が近づくと花や植物に関する催しが多くなってきて、
つい、足を運びたくなります。
前回のイングリッシュガーデンの展覧会に続いて、
“ガレの庭”花々と声なきものたちの言葉 展に行ってきました。



場所は東京 白金にある庭園美術館。
建物は旧朝香宮邸で重要文化財に指定されています。
また庭は自然にあふれ、一時、都会にいることを忘れさせてくれます。
建物と庭を訪ねるだけでも十分楽しめる邸宅美術館です。
“ガレの庭”展は、ヨーロッパ19世紀末の装飾芸術アールヌーヴォーを代表するガラス工芸作家エミール・ガレの展覧会です。

残念ながら、展覧会は撮影禁止で、
すばらしいガレの作品は、WEBでご覧下さい。
http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/160116-0410_galle.html
今回の展覧会は那須の北澤美術館所蔵の作品を中心に構成されていますので、
合わせてこちらのサイトもどうぞ。
http://kitazawamuseum.kitz.co.jp/exhibition/pdf/emile-part2.pdf
エミール・ガレは日常生活に身近な工芸、つまり、ランプ、花瓶、器などの私たちの生活とともにある品々を芸術のレベルまで高めました。
ガレの作品をひとつずつ丁寧に眺めていくと、
作者の植物への観察力のすばらしさが伝わってきます。
パリのオルセー美術館より借りてきたという作品の下絵はまさに植物画でした。

特徴を的確にとらえ、花の蕾や葉の葉脈までも表現しています。
作品の中には表面のガラスを盛り上げて立体的に造形したり、形自体を植物に模しているものもあります。
また、光の当たり方によって陰影ができ、見る角度によってその表情を変えていきます。
それはまるで、3次元のボタニカル・アートのようです。
庭に根ざす植物の一日のうつろいをじっと眺めているガレの姿が見えるようです。

ガレは陶器とガラスを商う家に生まれますが、
とても植物に興味のあった人のようで、学友の祖父であった植物学者からかなり専門的な植物の指導を受けていました。
生まれた地であるフランス、ナンシーには自宅、工房とともに大きな庭がありました。
そこには世界中から集めた3,000種もの植物が植えられていたといいます。
その中に、日本からもたらされた400種の植物も含まれていたそうです。
確かにこの展覧会では、松、菊などの日本を連想するモチーフの作品が多くありました。

ガレの作品は日本美術との深い結びつきを感じるといわれていますが、
色使いなどは西洋的なのに、なぜか日本の着物や浮世絵を連想させます。
このようなところがガレの日本での人気の高さの理由の一つかもしれませんね。

そしてガレに日本の美術や植物を紹介した日本人がいました。
高島北海(本名高島得三)という人です。
彼は1885年農林省の森林担当技官となるために政府からフランスに派遣されました。
高島北海は林業の研究の傍ら、植物や絵画にも造詣が深く、
日本に帰国後は風景画家として名を知られた人です。
アールヌーヴォーというとフランスを代表する芸術ですが、
日本でいえば明治初頭のころ、その時代に海を渡って、外国の文化の発展に深くかかわっていた日本人がいたなんて、興味深いですね。

美術館の建物である旧朝香宮邸はアール・デコ様式で、
内装装飾はフランス人装飾美術家アンリ・ラパン。
この時代、芸術様式は19世紀末のアールヌーヴォーから、
20世紀初頭にはアール・デコへと移行していきます。
同じフランス人の手に依るためか、時代が近いせいか、
ガレの工芸品と旧朝香宮邸のインテリアがすばらしくマッチしています。
ドラえもんの“どこでもドア”を開けてしまって、
どこかヨーロッパの邸宅にワープしてしまったような感覚にさえおそわれます。

ちょっと今回は解説が長くなってしまいました。
堅苦しい説明はさておき、非日常を味わうにはとてもよい展覧会でした。
4月10日までの開催です。
ぜひ、晴れた日にお出かけください。
カフェも気持ちいいですよ!

東京都庭園美術館
http://www.teien-art-museum.ne.jp/





・森 美保【オフィシャルサイト】

http://www.arrierecourune.com/




美人花壇 TOPへ >>
美通信 コンテンツ一覧へ  >>