vol.42 物語のあるバラ




以前、美人花壇Vol.17でご紹介した“KIZUNA”
東日本大震災のチャリティーのためにフランスから贈られたバラです。
“KIZUNA”はフランスのマルセーユ生まれですが、
祖先をさかのぼると、なんと日本にたどりつきます。



“KIZUNA”のルーツは日本の野バラ。
とても不思議なストーリーが“KIZUNA”には隠れていました。
幕末、ヨーロッパに渡った日本の野バラがフランス、リヨンのバラの名門、ギヨー家の元へ。
そして、ギヨー家の2代目、ジャン・バティスト・ギヨーはバラの歴史に大きな貢献をもたらしたバラ、“パクレット”を野バラから誕生させます。
150年の歳月を経て、日本の野バラの祖先が未曾有の大震災のために、
ふたたび日本へ、“KIZUNA”となって帰ってきました。
さらに、偶然のめぐりあわせは続きます。
“KIZUNA”を誕生させ、日本に贈ってくれたフランス人バラ育種家、ドミニック・マサド氏は、ギヨー家の6代目にあたります。
東日本大震災のためのバラを無償提供してくれる育種家を探したフランスオールローズ協会のメンバーも、候補の中から震災のバラとしてこのバラを選んだ私自身も、こんなストーリーがこのバラに隠されているとはまったく知りませんでした。
今にしてみれば、“KIZUNA”はマルセーユのまばゆい光の中で誕生した時から、数奇な、そしてすばらしい運命を背負っていたわけですね。



“のぞみ”
このバラにも悲しいお話が秘められています。
時代は第2次世界大戦終戦直後。
のぞみちゃんという小さな女の子が、
満州からお母さん、おばあちゃんといっしょに日本へ引き揚げてきました。
栄養不足、つらいきびしい道中、おかあさんとおばあちゃんは途中で亡くなってしまいます。
何とか周囲の人たちに助けられながら、のぞみちゃんはひとり日本の土を踏むことができました。
けれども、4歳になったばかりの女の子にはこれまでの道のりはあまりにも過酷で、
お父さんの待つ東京に向かう汽車の中、車窓から富士山が見えるあたりで残念ながら息を引き取ってしまいます。
迎えにいった品川駅で、おとうさんは、まだぬくもりの残っているのぞみちゃんを
きつく抱きしめたそうです。
のぞみちゃんのおじさんにあたる、小野寺透さんはこの可憐なバラを作出し、
“のぞみ”という名前をつけました。



“のぞみ”のバラは海外でも有名で、
“KIZUNA”を贈ってくださったフランスオールドローズ協会の会報誌にも、
“KIZUNA”といっしょに紹介されています。
小野寺さんのお弟子さんである渡辺桂子さんは小野寺さんの遺志を受け継ぎ、
二度と悲惨な戦争が起こらないようにと、
のぞみちゃん基金を設立し、寄付金はユニセフに全額寄付されています。




“プリンセス・オブ・ウェールズ”
そう、ダイアナ妃のバラです。
“プリンセス・オブ・ウェールズ”はイギリスのハークネス社よりダイアナ妃に献呈されたバラです。
“プリンセス・オブ・ウェールズ”と名づけることを許可され、現在、ダイアナ妃が生前援助していた福祉団体「英国肺病基金」に売り上げの一部を寄付しています。

ダイアナ妃の遺志は、“プリンセス・オブ・ウェールズ”
という名のバラに託され、今も多くの人たちを救っています。

バラの花にまつわるストーリー、いかがでしたか?
現在、バラの種類は世界に数万種といわれています。
バラに希望や想いを託し、後世に伝える。
歴史があり、魅力的な花だからこそ、美しいだけじゃない力が潜んでいるんですね。
つくづく、バラの力はすごいと感じます。

“KIZUNA”の詳しいストーリーは、
http://www.charity-rose-kizuna.com/
“KIZUNA” “プリンセス・オブ・ウェールズ”販売先
大森プランツ株式会社
http://www.omoriplants.com/





・森 美保【オフィシャルサイト】

http://www.arrierecourune.com/




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