• トップ
  • >
  • vol.47 バラのルーツ探る冒険談

vol.47 バラのルーツ探る冒険談




今回はバラにまつわる本をご紹介します。
イタリアのヴェネチアの片田舎町で、
春になるとピンクの美しい花を枝いっぱいにつけて、咲き誇る名もなきバラ。
この土地のかつての持ち主であったご夫婦の子孫が、
そのバラのルーツを探るために、ヨーロッパの各地を巡るノンフィクションの物語です。
バラの専門家ではなかった筆者が、自らプライベートローズガーデンのオーナーやバラの研究者などを巻き込み、徐々に読者とともにバラの知識を蓄えていきます。
ナポレオンの皇后ジョゼフィーヌの時代から現在まで遡り、時を越えた冒険談に我々を引き込んでくれます。



文章の間にシンプルな挿画がほどこされ、読者のイメージを膨らませます。
バラは花の中でも特別な種で、古代ギリシャの時代にすでに人間の生活と深く関わっていました。
はじめはバラ油として、そして装飾用の花として、その時代ごとに人々を魅了しています。
比較的自然交配し易い種であるためか、人工交配もヨーロッパでは早くから盛んであったようです。
特に、皇后ジョゼフィーヌはバラの種の発展に大きく貢献したと言われています。
今まで、春にしか咲かなかったバラが、四季咲き性を持つ中国原産のバラが、
ヨーロッパに導入されたことで、飛躍的にバラの種類を増大させました。
文中ではジョゼフィーヌの時代にどのような経緯でバラがヨーロッパに持ちこまれ、バラの発展へとつながっていったかまで触れられており、バラの歴史を楽しむ上でもよい入門書ではないでしょうか。
そして、いかに人々はバラを愛しみ、そのルーツを守ってきたかを知ることができます。
私が心惹かれたのは、文中に登場するプライベートローズガーデンです。
ローズガーデンを維持するのは、大変な重労働を強いられますが、
それを苦とも感じず、毎日欠かさず作業続けるガーデンのオーナーたち。
彼らのバラへの深い愛情が文中にあふれています。
手の入ったローズガーデンで、美しく咲くバラを想像して、胸が高まります。
この冒険談はノンフィクションですので、
おそらく実在するガーデンのはず。
機会があれば、いつかぜひ訪れてみたいものです。



バラの歴史についてもっと詳しいことをお知りになりたい方には、
この本がおススメです。
バラの誕生から現在に至る歴史に加え、植物学から見た生態、分類まで、
バラに関する事柄が詳しく説明されています。

バラを通して、我々日本人とヨーロッパの人たちとの、
植物への関わり方の違いを会間見た気がします。
しかし洋の東西を問わずどこの国でも、
植物は常に人々の生活の中にあったことを改めて感じる本でした。





・森 美保【オフィシャルサイト】

http://www.arrierecourune.com/




美人花壇 TOPへ >>
美通信 コンテンツ一覧へ  >>