• トップ
  • >
  • 第11回アペリティフ(食前酒)について

第11回アペリティフ(食前酒)について

食事をスタートする前のひとときに軽く胃を刺激させて、食欲を増進させるための飲み物、それが食前酒=アペリティフ。ふつうはアルコール度数のあまり高くないもので、すっきりとした味わいのものを選びます。ブランデーや蒸留酒などアルコール度の高いお酒を先に口にしてしまうと、舌の感覚が麻痺して、その後のワインや食事の味わいを鈍くしてしまうし、食事を楽しむどころか酔いが早くまわってしまいそう。食前には軽やかで、スッキリとしたものがよいでしょう。シェリーか、ジントニックなどの軽いカクテル、またはシャンパーニュなどの発泡性ワインが挙げられます。アペリティフは、一緒にテーブルを囲む友人達との楽しい語らいを一層盛り上げることでしょう。


まずシェリーについて。シェリーはスペイン産フォーティファイドワイン(酒精強化ワイン)で、どのようなレストランにも必ずといってよいほど揃えています。最近では、ティオペペに代表されるスタンダード銘柄のフィノ(辛口できりっとしたライプ)ばかりでなく、種類でいいますとアモンティリャード(フィノを熟成させたもの)やオロロソ(琥珀色で甘口もある)、ペドロヒメネス(リキュールのような濃厚な甘口)などもありますが、この中では軽めのフィノタイプを選びましょう。オロロソやペドロヒメネスはむしろ食後酒のほうが向いています。
カクテルについては、白ワインやシャンパーニュをベースにしたものがよいでしょう。ここでそのいくつかを紹介します。



<--◆-->

「キール」…クレーム・ド・カシスと白ワインを割ったもの。ブルゴーニュ地方ディジョン市の市長キールによって考案された。
「スプリッツァー」…グラスに氷を入れ白ワインをソーダで割る非常に軽いカクテル。
「ミモザ」…シャンパーニュにオレンジの果汁を加えるもの。
「ベッリーニ」…ヴェネツィアで生まれたカクテルで、プロセッコと呼ばれるイタリアのスパークリングに白桃の果汁を加えたもの。
「キール・ロワイヤル」…クレーム・ド・カシスというリキュールをシャンパーニュで割ったもの。
「キール・インペリアル」…クレーム・ド・フランボワーズとシャンパーニュを割ったもの。
いずれもフルーツとスパークリングのすっきりとした味わいを生かしたカクテル。フレッシュな酸味が食欲を促します。たいていはフルートグラスに注がれていて、見た目での色合いを楽しむこともでき、食卓を華やかに盛り上げる役目も担っています。また自宅でも季節のフルーツを使って簡単にスパークリング・カクテルを作ることができますから、いろいろと楽しんでみましょう。



<--◆-->

リキュールをベースにする場合は、ソーダで割ると飲みやすくなります。たとえばヴェルモットやカンパリ・ソーダはどなたにも好まれるアペリティフです。
「アメリカーノ」…カンパリ1/2 ヴェルモット・ロッソ1/2 に適量のソーダとオレンジスライスを加える。第一次世界大戦中にイタリアの若い兵士が作ったところアメリカ人ジャーナリストに非常に受けたためこう呼ばれるようになった。



<--◆-->


ソムリエにテーブルにつくなり「食前酒はいかがなさいますか?」などと言われると、とっさに思いつかず迷ってしまうことがありますが、機会があるごとに何種類か試しておくと、気に入ったアペリティフが見つかります。まずはアペリティフをオーダーしておいて、ゆっくりとメニューを決めるようにすると食事を和やかに始めることができます。
またレストランによっては、ウエイティングバーでアペリティフを出してくれるところもあります。待ち合わせをしていて先に着いてしまったときなど、何も口にしないで待っているより遅れてきた相手の気を軽くすることができます。


アペリティフは儀式ではありませんので好きなものを注文できますが、フランスやイタリアの格式のあるレストランでは、ビールを食前酒として頼むことは無粋だとされていて、ビールをおいていないところすらあります。どうしてもビール!という方は、「ブラック・ヴェルベット」というカクテルを頼みましょう。黒ビールをシャンパーニュで割ったカクテルで、このカクテルのために黒ビールだけはおいているというレストランもあります。一方、アルコールの苦手な方は、ガス入りミネラルウォーターにライムのスライスなどを入れてもらいましょう。「お水でけっこうです」と言うよりは洒落ています。
もちろん、このようなカクテルではなく、シャンパーニュをグラスでオーダーする人も増えています。どこのレストランでも、おすすめのシャンパーニュ・メゾン(造り手)を揃えているはずですから「おすすめのシャンパーニュを・・・」と言えばよいわけで、カクテル名をいろいろ覚える必要がなく、これがもっとも優雅にスタートするアペリティフといえるでしょう。





第12回食後酒について >>
壬生有香の「美食画報」 TOPへ >>
美通信 コンテンツ一覧へ  >>