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第13回ロゼワインについて

ロゼワインを最近あまり見かけなくなりました。昨今の赤ワインブームですっかり影をひそめている感じです。その昔、私が生まれて初めて口にしたワインはポルトガル産のロゼでした。白ワインのように冷たい温度でサーウ゛ィスされましたが、ほんのりと甘口で飲みやすく、それでいて2杯も飲むとすっかりいい気分になったことを覚えています。「マテウス・ロゼ」がそのワインの名前でした。当時は今のようにたくさんの種類のワインが輸入されていなかったので、手ごろな価格と飲みやすさにおいてもっともポピュラーなワインだったのかもしれません。ポルトガルでは過去50年間の中でもっとも成功を収めたワインだったということです。



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ロゼワインの醸造法は二通りあります。ひとつは赤ワインと同じように造られる方法で、通常赤ワインの醸造のとき2-3週間果皮や種を果汁とともに漬け込みじっくりと色素を引き出す(マセラシオンという)のですが、ロゼの場合は赤い色素が全部抽出されないうちに(だいたい12-36時間ぐらい)さっとブドウを引きあげます。これをセニエ法といい、ロゼワインの中でもっとも多い造り方です。もうひとつは、白ワインを造るのと同じ方法で黒ブドウを使います。こちらは直接圧搾法といって黒ブドウから色素をだす際に色をつけすぎないようにする方法です。欧州では、出来上がった赤ワインと白ワインを混ぜることは禁止されていますが、唯一この方法が許されているのがシャンパーニュ・ロゼです。
もともと、ロゼワインは天候不順で水分の多いブドウへの対応法だといわれていますが、それでも美味しいロゼを生産することで有名な地域もあります。



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フランスでは
●プロヴァンス・ロゼ(プロヴァンス地方)
●ロゼ・ダンジュ(ロワール地方)
●タヴェル・ロゼ(コート・ド・ローヌ地方)
を3大ロゼと呼び、非常に人気があります。プロウ゛ァンスの名物料理ブイヤベース(魚介類の煮込み)とロゼの組み合わせは有名です。ロゼ・ダンジュは少し甘口の柔らかくくせのない味わいで、お昼間にサンドウィッチなどと合わせるとよいでしょう。タヴェル・ロゼはこの中でもっとも辛口です。スパイシーな味わいですから、私は中国料理との相性がとてもよいとお勧めしています。特に北京ダックやチャーシューとの相性はバツグンです。

一方カリフォルニアには
●ホワイト・ジンファンデル
というロゼタイプのワインがありブラッシュワインとも呼ばれていますが、これはブラッシュ(頬を染める)の意味からきており、ほんのりとバラ色に頬をそめた女性をイメージしたものです。赤ワインのジンファンデルは非常にスパイシーで個性的なワインですが、ホワイト・ジンファンデルはすっきりと爽やかな味わいです。ハムやソーセージといった軽い前菜や、香草を使った魚料理、カジキマグロのグリルなどに合わせられているようです。



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イタリアでは、ロゼのことを"ロザート"と呼びます。ロザートはイタリア語で、バラ色とか、ピンク色といった意味。また"チェラスオーロ"と呼ぶロゼもあります。チェラーソは桜の木のことですから色の呼び方としてこのあたりから来ているのかもしれません。イタリア各地でロザートが造られていますが、私の気に入っているロザートは、ヴェローナで造られる
『ローザ・デイ・マジ ロザート・デッレ・ヴェネツィエ』(MASI) やトスカーナのキャンティで造られる『カステッロ・ディ・アマ・ロザート』(Castello di Ama)です。どちらも芳香が高く辛口、フレッシュで生き生きとした味わいです。またフリウリ地方で造られる『モスカート・ローザ』(Jermann)は、文字通りバラのような香りが口中にいつまでも残り、ロマンティックな味わいです。ロゼは日本人の心を惹きつけてやまない桜にもぴったりなワインです。これを機会にロゼワインを見直してみてはいかがでしょうか?





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