第19回ポートワイン

ポートワインはポルトガル産の酒精強化ワイン(発酵の途中でアルコールを添加して味にコクと保存性をもたせたもの;フォーティファイド・ワイン)で、シェリー、マデイラとともに世界三大フォーティファイド・ワインの一つです。
ポルトガル、ドウロ川の上流で収穫したブドウを原料にし、発酵の途中で6分の1に当たるブランデーを添加して発酵を止め、糖分を残して樽詰めされた原酒をBarco Rabeloバルコ・ラベロと呼ばれる帆船に積んでドウロ川を下り、ポルトの対岸にあるVila Nova de Gaiaヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアの酒商まで運びます。ここで数年貯蔵させたあと瓶詰めされ、そのあと対岸のポルト市から積み出しされます。この積み出しされるポルト市の名前からポートワインと呼ばれるようになりました。



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ドウロ川に最初にブドウを持ち込んだのは、フランスのアンリ伯で11世紀頃と言われています。アンリ伯はイスラム勢力排除のために来援した西方十字軍の一人でした。当時のアルフォンソ6世の王女Tarejaタレヤとの結婚で、1095年にミーニョ川とドウロ川の間の領主になったので、フランスのブドウを運んだと伝えられています。その後は、17世紀にイギリスがポルト酒の取引を独占、1703年締結されたメシュエン条約により関税率が下げられてからは、一層イギリスへの輸出が盛んになりました。日本で最初にワインを飲んだのは織田信長で、それがポートワインであったと言われています。



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ポートワインの種類
ポートワインは酒の色で3つの種類に区分けされています。
1.ホワイト・ポートWhite Port:白ブドウのみで造られています。マイルドな味でかすかなナッツ香が感じられます。軽く冷やすと食前酒に向いています。
2.ルビー・ポートRuby Port:赤ワインの酒精強化ワインを樽で4から5年熟成させたもので、もっとも一般的なポートワインです。乾燥させた茶や、プラムのような香りがします。デザートワインとして向いています。
3.トウニー・ポートTawny Port:赤ワインの酒精強化ワインを樽熟させますが、ルビー・ポートよりも熟成の期間が長く、非常に緩やかに酸化されます。薄い赤から琥珀色、クルミ色に変化したものまであり、テクスチャーがとてもなめらかで、アプリコットや乾燥のイチジク、キャラメルなどの香りが感じられます。シガーとの相性が素晴らしく紳士の食後酒として好まれています。



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また熟成年数を多くしたヴィンテージポートには公式に決められた名前があり、その種類は次のとおりです。
Vintage Port
ヴィンテージポート:作柄の良い年にその年のブドウのみで造られ、収穫年が記載される。瓶詰め時にろ過しないので、デカンタージュが必要。
Late Bottled Vintage Port
レイト・ボトルド・ヴィンテージポート:ヴィンテージポートで樽熟4から6年経過したもの。ラベルに収穫年と瓶詰め年を記載。ろ過されているのでデカンタージュの必要がない。
Colheita
コリェイタ:ヴィンテージポートで樽熟7年を経過したもの。
Aged Twany
エイジド・トウニー:トウニータイプで平均ブレンド年数が古く、10年20年30年など。
Light Dry
ライト・ドライ:低温発酵で造られた辛口のホワイト・ポート。



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ヴィンテージポートとシガーは、その芳醇な香りとコクの点で相性抜群。ポートワインはチョコレートとの相性もよく、ショコラ・ムースと合わせて飲めば甘美な味わいにひたることができます。また、ホワイト・ポートはトニックソーダで割って飲むとすっきりとした食前酒になります。ポートワインだけなら、つまみにクルミやアーモンド、ナッツなどが使われた焼き菓子を用意すると、さらに美味しく飲むことができます。スティルワインと違い、一度抜栓したあとも長く風味を保つことができますので、食後ゆったりとした時間を過ごすお酒として、ご家庭でもぜひポートワインを楽しんではいかがでしょうか。



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=ポートワインの著名なメーカー=
Borges ボルゲス Fonsecaフォンセカ
Novalノヴァル Dowダウ
Gonzalez Byass ゴンザレス・ビアス Sandeman サンデマン Graham グラハム Taylor テイラー Ferreire フェレイラ





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