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第22回ブドウ品種による香りの特徴 1.白ブドウ品種

ワインには、グラスに注がれるその瞬間から香りがあり、そして香りは時間の経過とともにさまざまな変化を見せます。これはブドウ品種による香り以外にも、ワインの経過年数やグラスの形状、室温などによっても微妙な変化があるからで、この香りは品種そのものの香りというより後発的な要因による香りです。
ご存知のようにワイン用ブドウには、白ワインを造る白ブドウ、赤ワインを造る黒ブドウがあります。もちろん産地ごとに栽培されている品種は異なりますが、代表的なブドウ品種の香りの特徴を知ることで、ワインを判断する上での知識をより幅広いものにすることができます。この回では、代表的な白ワイン用ブドウ品種が元来持っている香りの特徴を説明します。



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シャルドネ
世界中の白ワインでもっともポピュラーな品種。実は際立った特徴をとらえにくいことがこの品種の特徴とも言えるようです。その分、性質は柔軟で産地環境に適応しやすいので、ある意味ではその土地の香りを表現できるといってもよい品種です。また醸造においてステンレスタンクを使用するか木樽を使用するかによって、シャルドネで出来上がったワインの香りは大きく異なります。大概の人が、ナッツやヴァニラのような香り・・・とシャルドネの香りを表現しているのはシャルドネが樽醸造されたことによって来る香りのことで、本来品種が持つ香りではありません。一般的にはグレープフルーツのような白い実のかんきつ系果実の香りがほのかにするというものです。



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ソーヴィニヨン・ブラン
シャルドネと並ぶ白ワインの代表的な品種で、シャルドネよりは香りの判別はしやすい品種です。フランスのロワールや北イタリアで造られるソーヴィニヨン・ブランは清涼感のある植物系の香りが特徴で、ハーブ類、ライム、キウイ、芝生などがぬれたような草の香りがします。まれに草がむれたような状態になった香りを感じることもあり、ワインの教本には「猫のおしっこのような香り」とあるのが、あながち遠い表現ではないということも感じます。また、いぶしたようなスモーキーな香りがするものもあります。



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ゲヴュルツトラミネール
アルザスやドイツで主に栽培されている個性ある品種。香りの特徴も他の品種とはちがう独特で個性的な香りです。果物のライチの香りというのが代表的ですが、クミンやコリアンダーなど香辛料の香りもあります。収穫年がよく素晴らしい品質に恵まれた場合のみ、バラの香りがでることもあります。



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ヴィオニエ
フランス、コート・デュ・ローヌ地方北部の魅力的な白ワインとして有名な品種です。芳香性が高くゲヴュルツトラミネールと同様、個性のある香りをもっています。品質の落ち着いたヴィオニエには、白桃、アンズ、ジャスミン、洋ナシのシロップ漬けなどの香り、またキンモクセイやクチナシなどの濃厚な花の香りが感じられることもあります。一方、熟成の段階でややクセがでてくる場合もあり、そのようなワインにはひねショウガのような香りを連想することもあります。



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同じ品種であっても、産地により冷涼な地域で作られる場合と温暖な地域でつくられるものとでは香りが違います。例えば、シャルドネを例にとっても、ブドウ栽培の北限といわれるフランスのシャンパーニュ地方やブルゴーニュなどのシャルドネと、オーストラリアやチリなど温暖な地域で作られるシャルドネとでは、かなり大きな差が感じ取れるものです。冷涼な地域では清涼感のある香りが中心になり、薬味やハーブ類、白い花は繊細な香りが特徴です。また果物なら白色、または熟していないためまだ青い色をした若い果実の香りが特徴として挙げられます、一方、温暖な地域では果物の場合、メロンや桃が熟した香り、またトロピカルフルーツなどのように最初から濃い香りがありますし、干した果実や、ジャム状に加工された甘い香りを連想できます。このように産地によって香りの特徴が変わるのがワインの性質とも言えます。
また植物や果物などにおいては、時間の経過にも留意する必要があります。私たちの身の回りにある植物や果実すべてのものに時間の経過による香りの変化があります。たとえば百合の花なら、つぼみのとき、大きく開いたとき、枯れてゆくときと段階によって香りが変わります。果物で例を挙げると、パイナップルも未熟なときより熟してきたときのほうが香りは強いですし、シロップ漬けされたパイナップルはより濃厚な香りに変わります。ひとつの果実であっても、その香りが、どのような状態のときの香りかを考えてみると、香りの特徴がより細分化され、産地の特徴と結びつけてワインを判断する手がかりにすることができます。





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