• トップ
  • >
  • 第23回ブドウ品種による香りの特徴 2.黒ブドウ品種

第23回ブドウ品種による香りの特徴 2.黒ブドウ品種

白ブドウは白ワインを作るブドウ品種、黒ブドウは赤ワインを作るブドウ品種ということは周知のとおりですが、白ブドウ品種より黒ブドウ品種のほうが、より香りのヴァリエーションがあり、重みと複雑性に富んでいます。また白ワインと比べると赤ワインのほうが、熟成による香りの変化が著しいといえます。では品種ごとの香りの特徴をみてみましょう。



<--◆-->

カベルネ・ソーヴィニヨン
ボルドーワインに代表される品種です。今では国際品種として世界中で栽培されていますが、特にカリフォルニアなどに素晴らしいカベルネ・ソーヴィニヨンがあります。特徴的な香りは、インクの匂い。果物で表現するなら、カシスやブラックベリーといったところです。醸造の仕方によっては、シダやユーカリ、ミントといった植物系の香りもあります。全体的に濃厚で、フルボディ、パワーを感じるワインが多いので、香りもヴォリュームがあると思われがちですが、意外に落ちついた繊細な香りです。



<--◆-->

メルロー
メルローは、近年になり100%で使用される高級なワイン(例えば、ボルドー地方のシャトー・ペトリュスやル・パンなど)もでてきましたが、元来はカベルネ・ソーヴィニヨンやカベルネ・フランなどとともに合わせて使用された品種です。メルローに対しては、全体的にまろやかな印象を持っている人が多いと思います。香りの点でカベルネ・ソーヴィニヨンとの相違を挙げようとするならば、それは土の匂い。そして土から連想されるものでトリュフの香りというのもわかりやすいかと思います。またスミレの香りという表現も多くあります。



<--◆-->

カベルネ・フラン
主にブレンドされて使用されますが、ロワール地方では単一100%で使用される赤ワイン、シノンが造られる品種です。ワインスクールでは、カベルネ・フランの香りを説明するのにどの講師も口をそろえて"ピーマンやしし唐の香り"と教えるように、青くさい野菜の香りがするものです。しかし、ときに若々しく果実味のたっぷりしたカベルネ・フランには、チェリーやスグリなど赤い実の果実や甘みを連想させる香りも感じることがあります。タンニンが軽めで、さわやかな味わいを持った軽やかな赤ワインが多いです。



<--◆-->

ピノ・ノワール
ブルゴーニュ地方のワインを代表する偉大なブドウ品種です。近年はカリフォルニアのソノマ、オーストラリア、ニュージーランド、イタリアの一部で極上のピノ・ノワールが栽培されています。ピノ・ノワールを使った若いワインにはプラムや梅のような酸味を感じる香りが強く感じられますが、熟成していくうちに干したプラム、レーズン、またはアプリコットのような上品な香りがでてきて、その後、紅茶やタバコなどの乾いた香りに移行するものがあります。これらの香りを感じ取れるワインはいずれも素晴らしいピノ・ノワールで、時により、スパイシーな香りを伴います。



<--◆-->

シラー
フランス、コート・デュ・ローヌ地方北部の代表的ブドウ品種で、深く濃く濃密なワインに仕上がり、香りも味わいも非常に個性的です。果実なら色の濃い実で、ブラックベリーカシスなどを感じますし、スパイスの香りが特徴だといえるでしょう。クローヴ(丁子)、コショウ、八角などの香りははっきりと嗅ぎ取ることができます。フランス以外にも、オーストラリアでは優秀なシラーがたくさんあり、フランスのエルミタージュ(ローヌ地方北部のワイン)をもじり、ハーミタージュ・シラーと呼ばれているようです。最近になってイタリア、トスカーナ地方南部でも素晴らしいシラーが作られるようになりました。



<--◆-->

グルナッシュ
コート・デュ・ローヌ地方南部のワインに使われている品種ですが、この品種は他の品種をブレンドさせることが多いようです。シラーと似たようなキャラクターですが、シラーよりも温和な印象です。果実味の凝縮感があり、シラーと比べるとより甘味をつよく感じる香りです。



<--◆-->

ネッビオーロ
北イタリア、ピエモンテ地方で栽培され、この品種を使用する代表的なワインがバローロです。よくブルゴーニュのピノ・ノワールと類似していると言われますが、香りに関してはいろいろ違う点もあります。この品種の中では、薬草のリコリス(リクイリツィア:甘草)がもっともイタリア的な香りですが、他にトリュフ、なめし皮、葉巻、干しイチジク、キノコなどの香りがバローロを表現するときによく使われます。



<--◆-->

サンジョヴェーゼ
北イタリアから中部イタリアまで栽培されているイタリア固有のブドウ品種で、その代表はキャンティ、またはブルネッロ・ディ・モンタルチーノです。気品高い香りと味わいは多くのワイン・ファンを魅了している品種です。サンジョヴェーゼが若いワインのうちは、清らかなスミレの香りがするもので、他にはベリー系果物やブラックチェリーなど、ハーブではローズマリーの香りもします。年数を経るとなめし皮や葉巻、そしてオレンジの皮などの香りが感じられるようになり、熟成感を楽しむことができます。




第24回ワインと料理 >>
壬生有香の「美食画報」 TOPへ >>
美通信 コンテンツ一覧へ  >>