第24回ワインと料理

「魚料理には白ワイン、肉料理には赤ワイン」これがワインと料理の合わせ方、と感じている方が多いと思います。
これは間違いではありません。基本中の基本といってもよいのですが、いろいろなワインを知ると必ずしもこの言葉どおりではないところがワインの醍醐味なのです。



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では、なぜ魚には白ワイン、と言われるのでしょうか。
焼き魚にレモンやスダチなどの柑橘系の果物を搾ると魚の味がひきたち、より美味しく感じますね。白ワインの酸味は、柑橘系の果物と同じで、言い換えれば魚の味を引き立てる酸味なのです。一方赤ワインは、スパイスの役割と同じです。肉料理には多少のスパイスが加えられたほうが美味しく感じるでしょう?このように”相性のよいワインと料理”とは、一緒に摂ることにより、その相乗効果によって味わいがより美味しくなり、ワインも料理も互いの味を引き立て合うことをいうのです。



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では、どのようにしたら料理と合うワインを探せるのでしょうか。
まず、もともと料理の持っている特性がワインの味わいに含まれていれば間違いなく相性がよいといえます。たとえば「牛肉の赤ワイン煮込み」。これには料理自体に赤ワインが使われています。ソースの味の基本となるものが赤ワインですので、問題なく合います。また、スパイシーさという点でいえば、牛の網焼きや羊のオーブン焼きなどシンプルな肉料理であればあるほど、ワインが肉の味わいを引き立てて、美味しく感じさせます。
逆にまったく異なる味わいの性質のものに対して、ワインを一緒に飲むことにより新しい味わいが生まれる相性があります。例えば、プロシュート(生ハム)とメロン。動物性の味わいに果実の甘みが加わっており、食感も違うものですが、こういった時には果実味があって軽やかなイタリアのすっきりとしたスパークリング「プロセッコ」などや、あるいは軽く発泡していてフルーティな「ランブルスコ」などがおすすめです。



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ワインを合わせる時、何にしたらよいか迷ったら、まず”料理の色に合わせる”という方法があります。いたって簡単な方法ですが、ほぼ、はずれることがありません。
例えば、白身の魚には白ワイン。でもカツオに白ワインを合わせると少し生臭みを感じます。これはカツオの血合いに含まれる鉄分が白ワインの味わいとぶつかるためです。というわけで、カツオは魚であっても赤ワインのほうが合います。かといって、ボルドー産のようなタンニックでフルボディの赤ワインでは味が負けてしまいますので、色の明るいブルゴーニュ産のピノ・ノワールなどを合わせます。またマグロは、赤身、トロどちらを選ぶかによって相性のよいワインはかわりますが、赤ワインのほうがよく合うでしょう。赤身ならカツオと同様、トロであれば脂肪分が多く含まれていますのでこの脂肪に赤ワインを合わせます。トロをグリルしていつもよりコショウをきかせるとより赤ワインがより美味しく感じられることでしょう。



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一方、鶏や仔牛など、調理をすると白い肉になる、味わいも比較的淡泊な肉類は白ワインも合います。日本ではあまり食べる習慣がありませんが、ヨーロッパではウサギ肉をよく料理します。この場合もほとんどが白ワインと合わせられるようです。
ではサーモンはどうでしょう。手軽に家庭で楽しむ代表的な料理はスモーク・サーモンもしくはサーモンのムニエル。白ワインだと酸味がきいてすっきりした相性になりますが、ワインの味わいを幅広く楽しんでいただくために、ロゼワインやスパークリング・ロゼを合わせるという方法です。これも素材の色にワインを合わせる手法で、白ワインよりもやや味わい深い相性になり、料理に違和感なく合うと思います。



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ワインはもともと外国のものだから洋風な料理には合わせることに問題はありませんが、日本料理との相性はどうでしょうか。現在、日本でも世界中のさまざまなワインが入手できるようになり、ブドウ品種の種類も多くなりました。相性としてのキーワードは「醤油に合うワイン」でしょう。まずイタリアのサンジョヴェーゼがそうです。サンジョヴェーゼに代表されるキャンティ・クラッシコは、赤ワインでありながら果実の酸味、スパイシーさ、ほどよいタンニンなど、味わいのバランスに優れており、醤油味とよくなじむワインのひとつと言えます。また、醤油とワインを上手に調合して、よりワインを美味しく飲むための秘術もあります。例えば、鰹やマグロを醤油で味付けする際に、飲もうと思うワインを少量混ぜてから調理します。すき焼きなどの場合も鍋肌にそって少量の赤ワイン(そのとき飲むワインが望ましい)を入れてアルコールをとばすようにするとすき焼きのタレと赤ワインが調味され、ワインとの相性が抜群によくなります。





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