• トップ
  • >
  • 第25回リキュールについて

第25回リキュールについて

蒸留酒にハーブや果実、花などの副材料で香りを抽出したものを付与し、砂糖、シロップなどの甘味を加えて着色や味の調整をしたお酒を「リキュール」といいます。
リキュールはそのまま飲むこともありますしカクテルに使われることも多いものです。
そもそもお酒に香りや風味をつけて楽しむ習慣は古代エジプトや古代ローマの時代からありますが、現在のように蒸留酒をベースに保存性を持たせたリキュールが生まれたのは、十字軍の遠征によってアラビアの技術を知り持ち帰った中世ヨーロッパです。



<--◆-->

ルネッサンス後期、錬金術の発展に伴って蒸留の技術が発達し、高いアルコール度数の酒が作られるようになると、錬金術師たちは生命力を高めるための霊酒だと考え、各種の薬草、香草などを加えてさらに効果の高い不老長寿の秘薬とされたエリクシル、これがリキュールの原型だと言われています。
その後その技術は、各地の修道院に受け継がれ、薬用酒として盛んに作られるようになったのですが、これがリキュールの一種、シャルトリューズです。



<--◆-->

シャルトリューズはフランスのシャルトリューズ修道院に伝えられた薬草系リキュールで「リキュールの女王」と称されている銘酒です。
先にも書きましたがシャルトリューズは、まず不老不死の霊薬として1605年にカルトジオ会で作られた処方がフランス王アンリ4世の式部官であったマレシャレ・デストレに捧げられ、この処方は1764年にシャルトリューズ修道院に渡り、1767年に製造が始まったとされています。
これを更にジェローム・モベック神父により注釈をつけられた処方が現在のヴェール(緑のシャルトリューズ)の製造法に、そしてその後1838年になってプルーノ・ジャケ神父によりジョ-ヌ(黄のシャルトリューズ)の処方が作成されました。



<--◆-->

1970年以降は民間企業でも製造されるようになりましたが、厳正な処方は現在でもシャルトリューズ修道院の修道士3人のみが知る秘伝の処方だそうです。
「ヴェール」はスパイシーでハーブの香りが豊かな特徴、アルコール度数は55度。「ジョーヌ」は蜂蜜の甘味が強くまろやかな味わいで、ジョーヌのほうがヴェールよりややアルコール度数は低く40度です。
シャルトリューズには、大樽で8年以上熟成させた「ヴェールVEP」、「ジョーヌVEP」と呼称される高級品をはじめ、現在、魅力あるさまざまなアイテムが出されています。
原初に近い処方の「エリクシル・ヴェジタル(植物の霊薬)」と呼ばれる甘味が少なくハーブ香が強いもの、シャルトリューズ修道院創設から900周年を記念して作られた「ナインス・センティネア」と呼ばれる特別記念品、そしてシャルトリューズが最初に処方された1605年を記念して作られ、1605年当時の製法を再現した「1605」、また2003年に5000本のみ限定で生産されたもので、ロットナンバーを刻印した銀メッキボトル350ml入りの「エピスコ・パレ」など、実際には入手の難しい貴重なシャルトリューズもあるそうです。





第26回リキュールの造り方 >>
壬生有香の「美食画報」 TOPへ >>
美通信 コンテンツ一覧へ  >>