• トップ
  • >
  • 第28回 テイスティング・ノート

第28回 テイスティング・ノート

親しい人とお気に入りのレストランでワインを楽しむことのある皆さん、せっかく美味しいワインに出会っても記録をしておかなければ、次から次へと出会うワインの名前を忘れてしまいます。銘柄とヴィンテージぐらいは手帳に書いている、という方もいらっしゃるでしょうけれど、ここでは、しっかりとテイスティング・ノートをつける方法をお教えします。テイスティング・ノートを付け始めるといろいろなことが分かるようになってきますし、テイスティング能力もアップします。ワインの経験を記録にとり、できるだけ多くのノートを残すようにすると自分なりの理解力があがり、表現力が確定し、それによってワインを体系的に覚えることに役立つのです。



<--◆-->

まず、記録をするための準備として、常に同じ方式で書き込むことのできるフォーマットを用意することです。銘柄やヴィンテージの他に生産地、輸入元、そしてどこで飲んだかなど基本的な情報と簡単なコメントが書ければよいので、自分で簡単に表を作ることができます。ロンドンにある王室御用達のステーショナリー・ブティックの「Smythson」ではワインノートが売られています。このワインノートには、まず基本情報としてワインの銘柄、造り手、コメント、生産地、収穫年、価格など、そしてテイスティング記録として、日付、テイスティングをした場所、ワインの外観、香り、味わい、記述、ブドウ品種などを書き込むようになっています。ハンドバッグに入るポケットサイズの手帳ですので、こまめに記録する習慣をつけてしまえば、あとになってあの時飲んだワインは何だったかしら?と困ることはありません。もちろん、このように既成の手帳ではなく、白紙のメモ帳に表をつくってオリジナルのワインノートでも十分です。パソコン上で記録に残す方法もよいのですが、パソコンは常時持ち歩くのが大変ですから、やはり邪魔にならないサイズのノートは1冊必要でしょう。



<--◆-->

ノートに記録する内容で、基本情報はもっとも大切ですが、そのワインをどう感じたのかを書く欄を少しとっておいてください。このコメントの書き方で、あなた自身のテイスティング能力をあげていくことができるからです。書き始めるとわかりますが、簡潔なコメントよりも少し多めの言葉で書いておくほうがよいものです。ノートの記録が厚くなっていくほどに、ワインのタイプの違いによってあなたがどう感じたのか、どう表現したのかがはっきりとわかるようになるからです。
ワインの表現は難しいものですが、なるべく自分がそれとはっきりわかる物で書くほうがよいものです。ワイン本でよく見かける外国人のテイスターの言葉をそのまま使い回しても、自分で想像ができなかったり、実物を見たことのない植物や果実の名前をあげてはいけません。初めはボキャボラリーが少なくても自分にわかる言葉で書くことです。テイスティング・ノートを続けるうちに、いろいろなものの香りや味わいがどんどん文字化されて頭の中に残るようになります。こうなってくればシメタものです。あとは参考書代わりに、同じ特徴をもったワインについてのワイン専門家の表現と自分の表現を比べてみるというのも勉強になるでしょう。
すこしノートがたまったところで、前の記述をもう一度読んでみるとさらに記憶しやすくなります。テイスティングの日付は年、月、日を忘れずに書きましょう。ワインは、同じときの購入品であっても、飲むときによって熟成感などが変化して味わいは違うものです。想い出とともに記録するというのもよいですね。





第29回 ワインと料理 Ⅲ >>
壬生有香の「美食画報」 TOPへ >>
美通信 コンテンツ一覧へ  >>