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第32回 オーガニックとビオディナミワインについて

昨今、オーガニックワインと表記されているものを多くみかけるようになりました。食品の世界でもこの「オーガニック」という文字列は最近私たちの日常において非常に重要なキーワードになってきています。
オーガニックワインとは、有機栽培農法で栽培された葡萄を使ったワインのことで、有機農法とは、栽培の過程で化学肥料や農薬を使用せずに作物を育てるものです。言い換えれば私達の体に摂取すると良くないものを撒かずに作物を育てることで、土が汚染されないので何代にもわたり同じ畑で同じ作物を育てることが可能だということです。フランス語ではオーガニックワインのことを「ヴァン・ビオロジーク」イタリア語で「ヴィーノ・ビオロジコ」と言います。



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ブドウはそもそも他の作物と比べるごくごく自然に栽培されている果物といってよいですが、だいたいが温暖で乾燥していて日当たりのよい土地で育つものですから、少し病気の心配はありますが肥料を大量に必要とするわけではありません。収穫量が多ければ、ブドウの質と味が落ちますので、そのためにできる限り収穫量を抑える生産者が多いのです。
フランス、コート・デュ・ローヌ地方の生産者シャプティエは、「ブドウの樹に寄生虫がついたとき、化学農法で殺虫剤を散布するがこれは間違いだ。なぜなら虫の存在そのものが問題なのではなく、虫が多過ぎることが問題なわけで、寄生虫の駆除には捕食者を呼び戻すことが一番。その天敵を呼び戻すことこそ自然体系を戻すことにつながる」と言っています。



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ワインは生の果実そのものではありませんので、オーガニックワインを造るためにはオーガニック農法でブドウを育て、オーガニックな製造方法でワインを醸造しなければなりません。新世界に見られる多くの生産者が当たり前のように使用する添加物も使うことができません。
ただし、決められたとおりにオーガニックを厳守するならば、何かと煩わしい問題にも直面し理想的なワインができないのも事実です。良心的な生産者は、必要に応じてごく少量の薬品を注意深く使いながらブドウの持つ力、土壌、天候を尊重して「オーガニック」という表示に恥じないワインを造っているというのが現状でしょう。またワイン醸造の過程で認められている添加物もありますのでまったく添加物が許されないというわけでもありません。



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今、私達が口にする食べ物の安全性を高く問われています。その表示法にも各国決まりがありどのように明記するのかも違いますが、今日の日本のように偽装表示が問題視されていると、ラベルに“オーガニック”と高らかに宣伝をしているメーカーに対しても逆に注意深くなってしまう心理もあります。



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ワインにつかう葡萄の栽培で、この有機農法のほかもうひとつ注目を集めている栽培法、それがバイオダイナミック農法です。
フランス語では「ビオディナミ」という言葉で、ワインフリークの間では“ビオのワイン”というように呼ばれています。
ビオディナミ・ワインとは、ビオロジクの取り組みに加え、1924年に人智学者のルドルフ・シュタイナーが説いた植物と天体の関連を体現した農法の生産者のブドウから造られたワインのことを指します。



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ビオディナミでは畑を取り巻く生態系を最も重要視し、化学薬品、肥料を使いません。フランス語で「プレパラシオン」と呼ばれる調合薬、自然界に存在する物質を調合した調剤を使用して土壌やブドウ樹の能力を引き出します。プレパラシオンは調合剤を与えるのではなく、あくまでも調合から生まれたエネルギーを与えるものという考えです。このプレパラシオンはさまざまですが、例えば、牛の角に牛糞を詰め、冬の間土中で寝かせたものや、水晶を砕いて粉状にし、牛の角に入れて寝かせたもの、またはアキレーの花を鹿の膀胱に入れて吊るすことで、花の持つ硫黄が土中のカリウムを呼び起こし植物の活性化を促すといったものまであります。
こうしたプレパラシオン使用や農作業、剪定(ブドウ)の日などは、すべて天地占星的なビオカレンダーに基づいて行われ、月の様相や月の公転面の昇降、太陽における地球の公転面の昇降における地球への気圧や引力、潮力の影響など天地占星の要素を多く含んだものになります。



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これらの栽培で造られたワインはEUで定められた基準で、ビオワインとして認定されるものです。ビオを認定する協会はさまざまですが、今もっとも強力な団体は「デメテル」です。
http://www.demeter.net





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