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第36回 ワインのオークション

1985年12月5日、ロンドンのクリスティーズのウエストルームで「1787年産Ch.ラフィット」が競売にかけられ、フォーブズ一族が10万5000ポンドで落札しました。支払い額は15万6000ドル、当時の為替レート換算によると3150万円相当。1本のワインとしては前代未聞の価格です。なぜならば、このワインはアメリカ合衆国第三代大統領トーマス・ジェファーソンの所有であったからです。ところが後に、このボトルの信憑性について疑問視する声があがり、大変な騒動になった・・・というのです。(気になる方は、アメリカのジャーナリスト、ベンジャミン・ウォレス著『世界一高い“ジェファーソン・ボトル”の酔えない事情』をお読みください)



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一般的にオークションとは、物品に支払われる対価を購入希望者間で競うというもので、入札する買い手側が価格を釣り上げながら最終的にもっとも高い価格を提示した買い手に落札されるものです。ほとんどの欧米のオークションでは、美術品や骨董品などの競売が目的です。ワインを主としたオークションハウスとしては、英国のサザビーズ、クリスティーズ、ニューヨークのアッカーメラル&コンディットワインオークション、シカゴ・ワイン・カンパニーなどが有名です。
サザビーズは現在創業する世界最古の国際競売会社でロンドン、ニューボンド・ストリートにあります。インターネット上でオークションを開催した世界初の美術品オークションハウスだとも聞いています。1744年3月11日サミュエル・ベイカーがジョン・スタンリー卿の図書館に所蔵されていた数百の価値ある本を売却する際、ロンドンに設立されました。サザビーズの名称はサミュエル・ベイカーの甥、ジョン・サザビーに由来するものだそうです。一方クリスティーズはサザビーズの設立から22年後の1766年12月5日、美術商のジェームズ・クリスティーによって同じくロンドンに設立されました。フランス革命後、ロンドンが国際的な美術品貿易の中心地となったことに乗じて成長した会社です。
収益からするとクリスティーズは世界でもっとも規模の大きいオークションハウスとなりました。こちらは、セント・ジェームズ地区のキング・ストリートにあります。またクリスティーズは、大学院修士課程のディプロマ・学位レベルまでの教科コース『クリスティーズ・エデュケーション』を運営しています。ロンドン、NY、パリにその拠点を置き、美術への関心と職業的訓練を身につけたい人々への教育をするためです。ここの卒業生は、世界の主要なオークションハウスでの専門家や美術商、美術評論家、美術品保険会社、美術品管理者など、世界中の美術分野の第一線で活躍しています。
クリスティーズやサザビーズでもワインを多く扱っており、年代ものの希少なワインが常に競にかけられています。日本でもオークションで落札されたワインを販売する会社があり、40~50年前のワインなどを入手することができます。



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ピエモンテ州アルバで開催されたバローロ・オークション(原題:Asta del Barolo)に招待されイタリアへ渡航したことがあります。地元の優良な生産者であるジャンニ・ガリアルドGianni Gagliardo社が、バローロというワインの素晴らしさをもっと広く世界に知ってもらうための啓蒙活動の一環としてピエモンテ州と合同でバローロのオークションを開催しました。出品されたワインは当然のことながらすべてバローロで、常に高値がつく人気の生産者のものや、今や入手の困難なグレート・ヴィンテージのバローロなど、イタリアワインマニアであればため息のでるようなワインが並びました。招待客は約200人。地元の名士やワインファンに混じり、イタリア国内、そして海外のワインジャーナリスト達、そしてミス・イタリアまでもが来場。そしてこのオークションは、ここアルバの他に香港、北京の3都市オンライン中継による同時開催でした。近年、香港はもとより北京のイタリアンレストランの躍進は相当なもので、私の知り合いの数人のイタリア人シェフも、北京に店を出したり、地元企業が作ったレストランにエグゼクティヴ・シェフとして招聘されたりしており、イタリアンブームが起こっているようです。富裕な中国人たちは、ボルドーワインだけでなく、イタリアワインにまで目を向けるようになったのでしょう。このオークションも落札の半分以上が北京や香港で落とされました。



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