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第40回 ワイナリーを訪ねる

ワインに興味を持つようになると、その国、産地にも関心がわき、やがてはどんな場所でどんな人が造っているのかということを知りたくなります。私が十数年前から始めたイタリアへの旅も、ワイナリーを見てみたい、という関心から始まりました。



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ワインは、ブドウになる前、いわゆる発芽から花をつけ、実になりそして収穫の日を迎えるまで、生産者の方に注意深く見守られてワイン用ブドウになります。そして、醸造、熟成、蔵元出荷を経て私達のもとに到達するわけです。この過程がどのような環境であるかを知るということは、そのワインへの理解を深めるために非常に役にたち、また同時に生産者のポリシーや情熱に直に触れることで、よりそのワインがより身近に感じられるものです。
私がイタリアで初めて訪問させていただいたワイナリーはバローロでした。
バローロのブドウ品種がネッビオーロというブドウで、「ネッビオーロ」」の語源になった「ネッビア」は、バローロの産地であるアルバの霧を意味する言葉だと知って、その霧のかかる風景を見たいと思ったことがきっかけです。アルバでは10月になると、早朝や夕刻、ブドウ畑一面に霧がかかることがあるからです。別説によると、この語源はネッビオーロ(黒ブドウ)の果皮に白い点が無数に付くことが、霧のよう、と表現されたということもあるようですが、いずれにしても、畑一面にかかる霧の風景は幻想的で素敵です。この風景を見るために私はイタリア、アルバに向かったのです。ワインの産地を自分の目で見るということは、そのワインを味わうための最高の情報源になるのです。



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ワイナリー訪問には二通りあります。まずは、ワイナリーが観光客を含め、所内見学をオープンにしている場合。こういうケースであれば訪問は簡単です。私は行った経験がありませんが、カリフォルニアはそのようなワイナリーが数多くあり、アポなしでもドライブの途中で何軒か見学でき、テイスティング(有料の場合が多い)もできるワイナリーが多くあるようです。



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もう一方は、ワインビジネスに関わる専門業者以外の訪問を許可していないワイナリーの場合です。こういったところも当然、訪問自体はできるのですが、しかるべき手続きが必要です。まずワイナリーへ、訪問する承諾を得てアポイントをとってくれる人を見つけることからやらなければなりません。現地ワイナリーのスタッフと直接連絡をとらなければなりませんので、それなりの強いコネクションが必要ですし、テイスティングの場合を考えると、少なくとも専門的なワインの知識を持つ人の同行が必須条件になります。
このように、訪問のハードルが高いワイナリーでも、運がよければ、醸造家から直接お話を聞くこともできます。私の場合、ワイナリー訪問は年間数十件を超えることもありますが、私自身の情報収集のため以外に、雑誌執筆のための取材を兼ねる場合もあります。このような場合は、生産者のPRにもつながりますので、一語一句聞き漏らさず、正確な情報を持ちかえり、そのワイナリーの魅力を最大限伝えることができるように、訪問時のメモとり、撮影など、かなり大変な作業があります。



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では、実際にワイナリー訪問が可能になった場合、どのように行われるのかを説明します。
ワイナリーに到着すると、見学にアテンドするスタッフが迎えてくれます。アポイントの時間には絶対に遅れないようにします。何故ならば、よほど観光的に見学を常時用意しているワイナリーでない限り、作業を中断して説明にあたってくれるところが多いからです。(従って、収穫時のもっとも忙しい期間は訪問をひかえます。)
ほとんどの醸造所で収穫されたブドウを圧搾し果汁にするプレス機から見せてくれるはずです。ここから醸造の手順どおりに見学のコースが組まれていると思いますが、ワイナリーの規模によっては、発酵タンクと醸造樽、熟成庫のみというところもあります。醸造所内は、ところどころ濡れている床もありますので、すべったりしないような靴を、そして所内を歩くのに不都合でない服装で行きましょう。私の経験上、女性はパンツスタイルで、底の平らな歩きやすい靴がよいと思います。また秋から冬にかけての時期は、セラー内が非常に低い温度ですので、上にはおる物も必要です。



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所内の見学が終了すると、たいていはテイスティングの用意をしてくれます。ここでの試飲はほとんど現行最新ヴィンテージのワインです。その年のブドウがどのような気候条件で収穫され、どのようなキャラクターのワインになったかを書き留めます。
テイスティングのときに、たくさん飲み過ぎないようにしましょう。たいてい、グラスと共にスピトーン(吐き器)が用意されていますので、香りと味を確認したら残りは捨ててもよいのです。何種類も試飲することになりますので、専門家はよほど貴重なワインでない限り、テイスティングにはたくさん飲みません。
また、このテイスティングのときは、醸造家からいろいろなエピソードやコメントを聞くよいチャンスですが、テイスティングは五感をフル稼働させる作業ですので、おしゃべりはタイミングを計って他の方のテイスティングに邪魔にならないようにすることが礼儀です。



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ワインを知ることはすなわちその国の文化を知ることにつながり、また同時にその地域の食文化を知ることにもつながります。いつもの旅のスタイルを変えて、世界各地にひろがるワイン産地へ、皆さんも訪れてみませんか?



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