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第41回 航空会社のセレクトワイン

2~3年ほど前から、年間数回以上イタリアへの出張を繰り返しています。仕事の依頼内容によって行く先が変わりますので、その時々でエアラインも違います。日本からイタリアへ行く場合、ミラノかローマでしたら、アリタリア航空の直行便がありますし、また、ヨーロッパへ飛ぶ便で、どこかの都市を経由してイタリアへ入国する場合もあります。



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私が最もよく使う航空会社がルフトハンザ航空で、ミュンヘンかフランクフルトを経由します。ルフトハンザでは、世界ソムリエコンクールで優勝したマルクス・デル・モネゴがワインをセレクトしており、2ヶ月に一度ワインリストを更新、「ヴィノテーク・ディスカバリー」というルフトハンザならではのワインセレクションを展開しています。このセレクションにあたっては、まずルフトハンザが年に30~50回の公募(世界各地で開催されるワイン見本市、インターネット、ワイナリーやワイン専門評論家からの推薦)よってワインを選定します。その後、社内のワイン専門委員会とマルクス・デル・モネゴ氏によるワインテイスティングが行われますが、この時は銘柄が見えないようにブラインドによる試飲が行われるのだそうです。このことから、ルフトハンザ航空が何よりもワインの品質を重視していることが伺えます。



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また上空機内でのサービスを前提とし、その環境にふさわしいワインかどうかも見る必要があります。地上のレストランとは異なる環境条件があるのでしょう。具体的には、酸味が少なくタンニンのあまり強すぎないワイン、そして上空ではアルコールが少し弱く感じられるため、アルコール度数のしっかりしたものを選んでいるようです。



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また本数の確保も重要です。ルフトハンザ航空が1種類のワインを選定する場合、2ヶ月の期間のサービスを前提として、ファーストクラスのワインならば約8000本、ビジネスクラス分で40000本、エコノミークラス分(4~6ヶ月)だと、200,000リットルのワインを確保できる銘柄という条件だそうです。



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英国誌ビジネス・トラベラーズBusiness Travellersが毎年発表する、「セラーズ・イン・ザ・スカイCellars in the Sky」という航空会社ごとのワイン評価がありますが、2011年度はルフトハンザ航空はビジネスクラスのセラー部門で第1位を獲得しています。他、ベスト・プレセンテッド・ワインリスト賞第4位という成績を修めています。



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ルフトハンザ航空では機内のダイニングインフォメーションとして、簡潔なワインリストが用意されています。搭載されたすべてのワインにマルク・デル・モネゴ氏のコメントが寄せられていて、私は後学のために、このリストを毎回持ち帰ることにしています。



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一方、米国の旅行雑誌グローバル・トラベラーGlobal Travelerにおいては航空会社のワインコンテストであるワインズ・オン・ザ・ウイング賞Wines on the Wingがあります。この賞はもっともすぐれたワインリストを提供する航空会社に贈られるもので、グローバル・トラベラー誌8月号で発表されました。本年は5回目を迎え、28の航空会社が、国際線ビジネスクラスと北米プレミアムクラスで提供している136種類以上のワインが審査されました。テイスティングには、グローバル・トラベラー誌のワイン・コラムニストであり、また高名なワイン・エキスパートであるユニス・フライド(Eunice Fried)を中心に組織された35名のワイン専門家が、審査員を務め、得票数の高い航空会社が受賞されたということです。本年度の栄えあるシャンパーニュ部門第1位はテタンジェ・コント・ド・シャンパーニュ1999  アシアナ航空。ビジネスクラス白ワイン部門においては、ドイツのドクターフィッシャー・リースリング2008、ファーストクラス白ワイン部門は「カーメル・ワイナリー・ゲビュルツ・トラミネール2009」が獲得となりました。



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イタリアまでは直行で約13時間と、かなりの長距離フライトです。最近では各座席で個々に楽しめるエンターテイメント・プログラムも充実しています。残念ながら私は、仕事の予備勉強や執筆などが常にあり、機内でゆったりと過ごせることはなかなかありませんが、それでも、搭乗してすぐの1杯のスパークリングによって、慌しく旅支度をし空港へ向かった時間がはるか昔のことであるかのように、空の世界へと誘われます。みなさんも空の旅でのワインを一味違う価値観で楽しんでみませんか?でも、くれぐれも飲みすぎにはご注意を。



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