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第42回 ボージョレ・ヌーウ゛ォー

毎年11月第三木曜日に解禁されるボージョレ・ヌーヴォー。新酒をお祝いするワインとして日本では大変ポピュラーになりました。ワインを扱う酒販店には、8月のお盆休暇が終わるとまもなく輸入元から発注申し込みのオファーがたくさん届きます。今回はボージョレの基礎知識だけでなく、周辺の魅力についても書きたいと思います。



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ボージョレ地方は、パリ~リヨンを結ぶ高速道路”オートルート・デュ・ソレイユ”とソーヌ渓谷に集中するすべての高速道路、フランス東部と西部を結ぶ幹線道路の交差する地点にあります。リヨンはフランスの第2の都市とも呼ばれ、ヴィルフランシュ・シュル・ソーヌから20分足らずの市で、リヨン・サトラス国際空港やTGVの駅までは40分という立地、パリからは車で4時間、TGVなら2時間で到着することができます。またスイスのジュネーヴまで、高速道路を使えば車で1時間半ほどです。



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今でこそ、ヌーヴォーの解禁日が決められましたが、その昔19世紀からボージョレの生産者とネゴシアンは、他の生産地域に比べて収穫後、非常に早くワインを売る習慣がありましたが、歴史的に公となったのは1951年11月9日付けの政令で、新酒の販売を公に認めるというものでした。たちまち、ボージョレの新酒は、パリのビストロなどで盛んに売られるようになりました。”Beaujolais Nouveau est arrive!!!!”(ボージョレ・ヌーヴォー到着!!!!)の宣伝文句が街中であふれるようになったのです。



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またやがて、ボージョレの人気はフランスに留まらずスイス、ベルギー、イギリスを経てアメリカや日本にも広まりました。この間にも、ボージョレの新酒については規則の改定が相次ぎ、基準や審査がより厳しくなっていったのです。1974年から特別委員会が設置され、基準を満たしたボージョレでなければヌーヴォーとして承認されないといった措置がとられるようになりました。



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1985年になって、それまで伝統的に11月15日と決められていた解禁日を、年によっては15日が週末にかかったりするなどの理由で販売の増加をさえぎっていた輸送・販売両面の諸問題を解決するため11月の第三木曜日と変更することにしたのです。



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この年を境に、日本での人気は最高潮に達し、世界最大量のボージョレ・ヌーヴォーが日本に輸入されるようになりました。その後、1995年以降、アジア諸国にも上陸、1997年には上海でも大人気となり翌98年には万里の長城にもボージョレ・ヌーヴォーが運ばれたのです。2000年にはソウル、2001年にはタイのバンコクで大々的なプロモーションを行って大成功を収めています。この世界的な人気の秘密はなんといっても、解禁から数時間で5000万本以上のボトルが150カ国を駆け巡るといった時の魔力でしょう。これもひとえにボージョレワインを愛する人たちのたゆまぬ努力の結果なのです。
さて、ここでボージョレのアペラシオンを知っておきましょう。ボージョレには12のアペラシオンがあります。



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ボージョレ
ヌーヴォーとして出される多くのワインがこのカテゴリーです。

ボージョレ・ヴィラージュ
この地区に38の畑があります。ボージョレ全生産量の25%を占めておりその一部はボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォーとしてやや格上のヌーヴォーが造られます。

クリュ・デュ・ボージョレ (10のクリュ)
10のクリュ(特定ブドウ栽培地域)があります。これらのワインは数年熟成させてから飲むのが普通です。以下10のクリュ;プルイイ、シェナス、シルーブル、コート・ド・ブルイイ、フルーリー、ジュリエナス、モルゴン、ムーラン・ナ・ヴァン、レニエ、サン・タムール



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ボージョレ地区は、ワインで非常に有名になりましたがフランスの美食の宝庫としても知られています。リヨンは、かのポール・ボキューズを生んだ美食の都として有名で、その周辺には料理の美味しいオーベルジュからミシュランの三ツ星レストランまでさまざまな魅力に富んだレストランがたくさんあります。食材の宝庫としていろいろなものが産出されますが、その中で最もボージョレの土地の人たちに好まれているものが豚肉です。かつてはどこの農家でも豚を飼っていて、サン・トワヌの日にトサツして黒ブーダンなどを造ったそうです。(黒ブーダンとは豚の血、スムール、玉ねぎ、ほうれん草、クリームで造るフランスの伝統地方料理)他にもさまざまなレシピのソーセージや豚肉料理があり、今でもクラシックなレシピのまま人々に伝えられています。



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また、この地方でもっとも有名な食品がチーズで、山羊のチーズ「カブリオン」は代表的なチーズです。また、牛のチーズでは「フロマージュ・ブラン」が多く、どちらも軽くフレッシュな味わいです。また、「セッション・ボージョレ」サン・マルスランに似た熟成チーズ、「フルム・ボージョレ」はリエルグ産の青カビチーズ、「ピエール・ドレ」は円筒形の乾燥したチーズで牛乳と山羊を半分づつ使用したもの、このようにさまざまなチーズがボージョレと共にだされています。



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他に、ボージョレには森が多く、きのこも豊富に採れます。ジロールやトロンペット・ドゥ・ラモール、シャントレル、セップ、プティ・グリなどフランス料理には欠かせない食材です。



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さあ今年はどんなボージョレ・ヌーヴォーが出来上がるのでしょうか?11月17日が今から楽しみです。



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