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第46回 イタリアのバール

イタリアに住む人達にとって、『BAR』(バール)は欠かせない存在です。どんなに小さな街でもいたるところにBARがありますが、日本のバーのようにお酒を飲むことが目的の店ではなく、朝早くから夜遅くまで営業されているので、人々の生活に密着しています。日に何度も利用する人が多く、たいていの人が職場の近くか家のそばにお気に入りのBARをもっています。



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イタリアのBARの朝は早く、どの街のBARも午前7時ごろ開店するのが普通です。それは、街に住む人達が朝のカッフェを飲みにくるからです。イタリア人で、朝食をきちんと家でとるひとは少なく、主婦を除いて、ほとんどの人が仕事に行く前にBARで簡単に朝のカッフェを飲み、人によってはブリオッシュ(クロワッサン)やコルネットも一緒に食べます。イタリアでは、朝食に塩を使った料理をとらない人が多く、それは、朝、糖分を摂取するほうが脳の働きによい影響を与える、と信じられているからだと聞きました。ここで朝のメニューを紹介しましょう。



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Caffe Espresso カッフェ・エスプレッソ(イタリア式エスプレッソ)
Caffe Macchiato カッフェ・マッキアート(エスプレッソに少しのミルクが入ったもの)
Cappuccino カップッチーノ(泡だったミルクとエスプレッソコーヒー)
Caffellatte カッフェラッテ (カフェオレ)
Spremuta d'Arancia スプレムータ・ダランチャ (搾りたてのオレンジジュース)
Spuremuta di Pompelmo スプレムータ・ディ・ポンペルモ(搾りたてのグレープフルーツジュース)
Succo di Frutta スッコ・ディ・フルッタ(フルーツ・ジュース)
Brioche ブリオシュ(クロワッサン型ですこし甘いパン)
Cornetto コルネット (クロワッサンと同じようなもの)
Cornetto con la Marmellata コルネット・コン・マルメッラータ(ジャム入りコルネット)



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仕事に向かう人はカッフェをバンコ(カウンター)で立ち飲みしてさっと帰る人が多いようですが、中にはテーブルに座ってゆっくりと新聞を読む人も居ます。お年寄りの方は1時間ほど居て店主と話し込んだりする人もいます。以前、私が泊まっているローマのホテルのコルネットがあまりにも美味しいので、知人とコルネットの話題になりました。50歳代の男性ですが「ジャム入りのコルネットと砂糖を入れたカップッチーノを朝食にとったら、4時間泳がなければカロリーを消費できないんだよ」と言われ、以来、美味しそうなコルネットを見るたびにこの苦言を思い出します。



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昼のBARは大忙しです。日本では、多くの人がイタリア人は昼休みが長く昼寝の習慣があると思っているようですが、それは大昔のことで今ではそのようなことはありません。昼は1時間あるかないかの間に食事を済ませ、会社に戻る人がほとんどなので、BARで簡単な昼食を取るというスタイルが定着しています。昼のBARではいろいろな種類のパニーニ(パンにハムや野菜などをはさんだイタリア風サンドイッチ)や、パスタ、リゾット、サラダなどを短い時間で食べることができます。

Panino con Prosciutto crudo パニーノ・コン・プロシュット・クルード(生ハムのパニーノ)
Panino con Tonno e Pomodoro コン・トンノ・エ・ポモドーロ(ツナとトマト)
Panino con Caprese コン・カプレーゼ(トマトとモッツァレッラチーズ)
Panino con Mortadella コン・モルタデッラ(ボローニャ産ソーセージ)
Insalata mista インサラータ・ミスタ(ミックスサラダ)
Penne al Pomodoro ペンネ・アル・ポモドーロ(トマトソースのペンネ)
Menu del Giorno メニュー・デル・ジョルノ(日替わりメニュー)

午後はティータイムとして利用されます。ガラスケースにパスティッチーニとよばれる少し小ぶりのケーキや、タルトがたくさん並びます。

Granita di Limone グラニタ・ディ・リモーネ(レモン味のシャーベット)
Pasticcino パスティッチーノ(プティ・ケーキ)
Torta トルタ(タルト)
Biscotto ビスコット(ビスケット)
Baba ババ(ラム酒に漬したナポリのお菓子)
Cannolo alla Siciliana カンノーロ・アッラ・シチリアーナ(リコッタチーズを詰めた筒状のお菓子)



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夕暮れからは、アペリティーヴォ(食前酒)をする人、待ち合わせなどにBARを利用する人でいっぱいになります。どのバールも午後6時ごろからアペリティーヴォの支度が始まります。軽いカクテルやビール、スプマンテなどをオーダーする人が多いのですが、オリーヴやポテトチップス、ナッツなどがおつまみにだされます。BARが揃えるワインは、たいていその土地のものが主流で、ほとんどが手頃な価格なので、その土地ではどのようなワインがあるか、また、今どのようなワインが流行しているのかを知ることができます。またいろいろな種類のワインをグラス単位で楽しむことができるのも魅力です。私としては、職業柄、地元で人気のワインをリサーチするのに絶好の場所なので、アペリティーヴォは必ずといってよいほどBARを利用します。

Vino Bianco ヴィーノ・ビアンコ(白ワイン)
Vino Rosso ヴィーノ・ロッソ(赤ワイン)
Vino Frizzante ヴィーノ・フリッツァンテ(発泡性ワイン)
Spumante スプマンテ(スパークリングワイン)
Prosecco プロセッコ(ヴェネト州産スパークリングワイン)
Birra ビッラ(ビール)
Birra alla Spina ビッラ・アッラ・スピーナ(生ビール)
Negroni ネグローニ(カクテル:ジン、ベルモット、カンパリ)
Campari Soda カンパリ・ソーダ(カクテル:カンパリ、ソーダ、オレンジ)
Olive オリーヴェ(オリーヴ)
Patatine パタティーネ(ポテトチップス)
Bruschetta ブルスケッタ(バゲットのカナッペ)



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私はアペリティーヴォにプロセッコやスプマンテを選びます。プロセッコとは、プロセッコというブドウ品種のヴェネト州産スパークリングワインですが、いわゆる地酒で、フランチャコルタ地区産もよりずっと値段がお手頃です。地元のBARでは日本で輸入されていない銘柄のプロセッコがあり、飲んだことのない銘柄を多く知ることができます。
出張時は仕事が多く、ゆっくりと友人と会うことができないのですが、アペリティーヴォの時間に旧友に来てもらい、BARで歓談することが息抜きになったり、また、新しい仕事のために人と会わなければならないのに、スケジュールがつまっていて会食できない場合にも、BARで挨拶をするということが私にとって普通になってきました。
皆さんも旅行の際、BARを利用してつかのまのイタリア生活を楽しまれてはいかがでしょうか?
* フランチャコルタ・・・ロンバルディア州フランチャコルタ地区で造られるスプマンテ。イタリアで最高ランクのスプマンテ生産地。



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