vol.1 花と人との関係



美通信をご覧のみなさま、はじめまして

今回より美人花壇を担当させて頂くことになりました、野邊愛子と申します

私はいけばながきっかけで花の世界に入ったのですが、ずっと好きだった芸術の街・パリに花留学して以来、日本とフランスのそれぞれの特徴をいかした独自のスタイルのお花をご提案させて頂いています

日本とフランス、東と西の洋は違えど、文化と伝統を守りつつもモダンで新しいことに挑戦していこうという姿勢には類似点が多くあると感じました。そこで私は、日本独自の、またヨーロッパならではの、日々の生活に根ざした行事やイベントなどのお話を通して、植物とのかかわりや季節の花あしらいなどについて皆様にお伝えしていきたいと思っています。花にも沢山の種類がありますが、植物は何と言っても、私たちに季節を感じさせてくれる自然の贈り物です

そしてこれは、四季をもつ日本やフランスのような国だからこそ、よりはっきりと私たちに訴えかけてくるものなのです。こうした四季の移ろいや花たちを身近に感じていただき、みなさまが忙しい日々の中でホッと一息つける時間を持っていただけるようなお手伝いができればと思います。

どうぞよろしくお願いいたします

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第1回目の今回は、花の歴史についてお話させていただきます。

といっても植物の歴史ではなく、人間がお花を生けるという習慣の歴史です

英語ではfloral decorationもしくは floral designといいますが、日本では和製英語で、アレンジメントやブーケを作る欧米式の花あしらいのことを総称して「フラワーデザイン」と呼んでいます

フラワーデザインが確立されたのはもちろん近代になってのことですが、人が花を生けるようになったのは、一体いつの頃からだったのでしょうか?

実は、もっとも古い、花を飾るという風習は古代エジプトのころから見られるのです。壁画などに、亡くなった人へ花を手向ける風習があったとの記録が見つかっています。これは紀元前2500年ごろのことですので、今から4500年も昔から、人は花を求めていたとは驚きですね

それから2000年以上後になりますが、紀元前1世紀ごろの古代エジプトといえは絶世の美女とうたわれたクレオパトラの時代

彼女が花を、特にバラの花を愛してやまなかったという話は皆さまもご存知かと思います。その頃には、花はすでに、特に高貴な人々の間で大切にされていたということがうかがえます

古代ヨーロッパにももちろん、花や植物を愛でる文化はありました。古代ギリシャの時代、権威のある人や優秀な学者達はオリーブや月桂樹の若枝で編まれた冠を身につけていたのです。厳密には花ではありませんが、植物が神聖なものとされ、リース冠を身につけるということが好まれていたわけです。古代オリンピックでも、勝者にこの冠が贈られていました。その名残で、この風習は現代のオリンピックにも引き継がれていますよね

また紀元後2世紀ごろの古代ローマ時代のモザイク画には、すでに切り花をカゴや器などの入れ物に‘いけて'いる絵が見られるのです

やはりギリシャ、ローマ時代の文化性が大変高かったのだということが、お花の歴史だけを切り取ってみても分かるのは興味深いことですね

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ところで、一気に歴史は進みますが、ヨーロッパでは13-15世紀ごろから花の装飾が宗教的な意味合いを持つようになり、教会・修道院などでの装飾も用いられるようになっていきます。今でも、教会などに行くと、祭壇には必ずお花が飾られていますよね

さらに15-16世紀のルネッサンス時代、これはさまざまな文化が大きく発展した時期ですが、ヨーロッパ中にフラワーデザインが体系的に広まっていきます。特にイタリアでは教会の装飾だけでなく家の中の装飾として用いられるようになるのです。その様子は、ルネッサンス期の画家の絵に花の絵が多くみられることからもうかがえます

花を飾ることが宗教的な、神聖な意味合いだけではなく一般的なものになったということで、私たちにとっては当り前でも、歴史的には大変画期的な動きだったのではないでしょうか

17世紀には、さらにアートとして、産業や農業として花の世界は広まり、植物を科学的に描いた芸術画、ボタニカルアートなども生まれます。18世紀にはフランススタイル、イギリススタイルがヨーロッパの花の流行を支配し、19世紀には大航海時代に入ったことで、アフリカや中国、アジアからも新しい種類の植物が手に入るようになり、それがフラワーアートの世界にも大きな影響を与え、発展させていったのです。

今では、ヨーロッパの中でもイギリススタイル、フランススタイル、オランダスタイル、ドイツスタイルなど様々な国の特徴を生かしたフラワーデザインが存在しています

そして、そのデザインは日々、進化しているのです









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・野邊愛子オフィシャルサイト

【PCサイト】 http://aikonobe.com

・お問い合わせ
aikonobe.com@gmail.com




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