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vol.3 睡蓮?水蓮?それとも蓮?



美通信をご覧のみなさま、こんにちは!

今回は夏の花のひとつ、睡蓮についてお話させていただこうと思います。

睡蓮と言うと、水辺に涼しげに咲く様子を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

残念ながら、切り花はあまり一般に出回らないのでお花屋さんではなかなかお目にかかることはできませんが、蓮と同様に、昔からいけばなの世界では大切にいけられてきた花のひとつで、その古典的な生け方は各流派で今日まで伝えられています。

それがなんと、私がパリの花屋さんで修業していたとき、何度か睡蓮の花に出会ったことがありました。睡蓮の花を使ってブーケを作ったのですが、切り花の睡蓮はパリでもやはり珍しいようで、目の肥えているパリのお客様たちにも大変好評なブーケになりました。



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ところで、「睡蓮~スイレン」と「蓮~ハス」の違い、皆さんはお分かりになりますか?

どちらも水辺に咲き、共通点も多いのですが、実は別物なのです。

ちなみに、タイトルにわざと「水蓮?」と入れましたが、これは誤字です。「睡蓮」が正しいのでお間違いになりませんように。

「睡蓮」という名前の由来が面白いのです。睡蓮の花は、一度咲くと昼間は開きますが夜になると閉じる、また次の日に咲く、というのを3回ほど繰り返し、3日でひとつの花が終わります。この、昼間は開く(起きる)、夜は閉じる(寝る)という花の習性を人になぞらえて、睡眠する蓮=睡蓮と名がついたそうです。ただし、まぎらわしいことに、別物と先ほど申しました蓮の花も、同じように3回開いて、閉じて、を繰り返す習性があるのですが。。。
また睡蓮は、和名では「ヒツジグサ」と呼ばれます。これは羊の刻(現在の午後二時)に咲くということでその名がついたようですが、実際には花は日が昇って明るくなると開きますので、必ずしも午後二時に咲くというわけではありません。







写真に載せたのは睡蓮の花ですが、では睡蓮と蓮の違いは何なのでしょうか?

大きな違いは、まず葉の違いですが、基本的に丸い葉に切りこみが入っているのが睡蓮、丸い円になっているのが蓮です。また睡蓮の葉は水面に浮いているものだけですが、蓮の葉は水面に浮いているもののほかに、茎が空に向かって伸び、立ちあがってくるものもあるのです。

蓮の葉は水をはじく習性があるので、蓮の葉に水をのせると、キラキラと水玉ができて輝きます。それで、昔の子供たちは蓮の葉を傘にして遊んだのだそうです。



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では花の違いはどうでしょうか。例外もありますが、基本的に睡蓮の花は水面に浮かぶように咲きます。それに対して蓮の花は、茎がすっと伸びて水面よりも高いところで花が咲きます。葉も水面より高くなりますが、それよりさらに花が高く伸びるのです。大きなものでは、花の茎が2メートルほどにもなるものもあるようです。

蓮は、池の底の土に根を張り、地下茎で増えていきますが、この地下茎が私たちの食べているレンコンだということは、ご存知の方も多いかと思います。また花が咲いたあとに、緑色のハチの巣のような形をした実ができるのですが、この実も、いけばなやアレンジメントで花材として使われています。中国やカンボジアなどアジアの国々では、蓮の実を生食したり、お菓子などに加工して食べたりもするのだそうです。



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蓮と言えば、仏教などの宗教と大変関わりの深い植物です。古いお寺などでは、池に睡蓮や蓮が植えられていることが多いですよね。極楽浄土の花として大切にされているわけですが、これは、泥水の中に生息していながらも正常で美しい花を咲かせる姿が仏教の教えの象徴とされているからだとか。



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話を睡蓮に戻しましょう。

睡蓮というときに忘れてはならないのが、印象派を代表するフランスの画家クロード・モネの描いた睡蓮ではないでしょうか。モネは1880年代にパリ郊外の町ジヴェルニーに居を構え、亡くなるまで40年あまりの時間を過ごしたそうですが、中でも愛してやまなかったのが美しい庭でした。色とりどりの花を植えた「花の庭」と、睡蓮の池を中心とした「水の庭」を作ったのです。この水の庭で、晩年のモネは後に彼の代表作のひとつとなる睡蓮の連作を描いたというわけです。

私も何度か、ジヴェルニーのモネの庭を訪れました。季節ごとに美しい花を咲かせる庭を歩いているだけで、当時のモネの同じ景色を見ていたのだろうかと、言いようのない感動があり、胸がいっぱいになったことを覚えています。



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東京では上野の国立西洋美術館や、ブリジストン美術館に、モネの睡蓮が常設されています。また上野公園の不忍池では毎年ハスまつりが開催されます。涼しげなハスや睡蓮を見に、お出かけになってみてはいかがでしょうか。



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