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vol.8 身近な花?高貴な花?~キクのお話~


美通信をご覧の皆様、こんにちは!

様々な花が一年中手に入る今日でも、もっとも手に入りやすく、私たちにとって特に身近な花のひとつにキクがあると思います。

皆様はキクにどんなイメージをお持ちでしょうか?素朴な花?日本的な花?それともお墓参りでしょうか?今回は、キクについてお話いたします。きっと今お持ちのイメージが変わると思いますよ。
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日本的な花としてのイメージの強いキク、それはそのはずです。実は私たちの身の回りには沢山のキクのモチーフがあふれているのですから。たとえば、50円硬貨。この裏に描かれているのはキクの花です。それからパスポートをお持ちの方は、その表紙にキクの紋様が描かれているのに気が付くはずです。わが国では、法律で定められた国の花というのがないのですが、国民に広く親しまれている「桜」と皇室の紋章である「菊」が事実上の国花と考えられています。そこから、パスポートの表紙にもなっているのでしょう。また、日本の在外公館の玄関には、国章の代わりとして菊花紋章の浮き彫りがありますし、国会議員のバッシ゛にもキクの花の紋章がかたどられていて、菊花がわが国にとって大切な花であることがわかります。
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とはいえキクは日本が原産の植物ではなく中国からもたらされたものです。中国で品種改良されたものが、奈良時代に唐使たちによってもたらされたと言われています。もともと日本にも350種ほど野菊が自生していましたが、たとえばヨモギなどのように食用とされており、キクの花を「観賞する」という習慣は平安時代頃、中国から秋の重陽(ちょうよう)の節句の風習が伝わってきたことにより、貴族を中心に広まっていきます。
そして江戸時代にはいると、キクの栽培が大変人気を集めるようになり、多数の品種が生み出され、「菊合わせ」と呼ばれる新しい花の品評会なども行なわれるようになりました。様々な様式が発達し、菊花壇、菊人形など様々に仕立てられた菊が観賞され、楽しまれました。現在でも、福島県の二本松や山形県の南陽では伝統を守りながら菊人形祭りが毎年開催されています。
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また、明治時代には、大輪のキクの花を求める傾向が強まり、「大菊」が盛んに育成されました。花の直径が30センチに達する品種も作られるようになり、この傾向は菊を日本の象徴として見る思想と関係していると思われますが、戦後まで続きました。現在でも、秋になると各地でキクの品評会が行われています。びっくりするほど大輪のキクにお目にかかることができますよ。

さて、日本では皇室の紋に使われるなど、高貴なイメーシ゛を持つキクの花ですが、「四君子」として中国から伝わった高貴な植物のひとつとして挙げられています。この四君子とは、蘭、竹、菊、梅の4種を、植物の中の「君子」として称えた言葉です。本来、君子は徳と学識、礼儀を備えた人を指し、文化人はみな君子になることを目指していました。この4種の植物がもつ特長が、まさに君子の特性と似ていることから、絵画の代表的な素材にもなりましたが、ここではキクの特徴は、晩秋の寒さの中で鮮やかに咲くとして、その姿が好まれていたのです。

ところで「菊」の漢字ですが、散らばった米を1箇所に集めるという意味があり、キクの花びらを米に見立てたのだと言われています。和名である「菊」(英語ではFlorist's Daisyもしくは Mumと呼ばれます)は、もともと「究極、最終」という意味があったので、一年の一番終わりに咲いていたこの花を「菊」と呼ぶようになったのだそうです。
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今では一年中手に入るのでいつが旬なのかわからなくなってしまいますが、先ほどから少しずつお伝えしているように、キクの旬の時期は秋なのです。別名・菊の節句といわれる重陽の節句が9月であることも、キクの時期が秋であることを表しているといえるでしょう。
キクというと、どうしてもお墓参りやお寺に供える花というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。古い習慣や由来は不明ですが、花が長持ちであることや、花粉や花びらが落ちて汚れることがないこと、日本に根付いている花で親しみやすいことなどが理由として考えられます。しかし今日では、お墓参りに限らず供花は、特にキクでなくてもと考える方が多くなっているように感じます。
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品種改良もさらに進んで、大きな花を咲かせるものから、細かく小さく咲くもの、色も様々なものがありますし、花びらの形も多種にわたるので、一見キクではないように見えるものも沢山あります。特に、まんまるでボールのように咲くピンポンマムという種は私も好きなキクの一種ですが、ブーケやヘッドドレスなとにも人気がある、大変かわいらしいお花です。

いかがでしょうか。キクが持つ様々な特徴についてお分かりいただけたのではないかと思います。さあ、お花屋さんで今度貴女が見かけるキクはどんなお花として映るでしょうか?

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